研究課題/領域番号 |
20K15467
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
板倉 正典 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70803162)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビタミンC / ポリフェノール / ヒストン / 抗炎症 / 敗血症 |
研究実績の概要 |
ビタミンCやポリフェノールなどの食品成分は体に良い。この事実は抗炎症作用や抗がん作用、心血管系疾患の予防などを対象とした数多くの研究で示されている。これらの活性は主に、食品成分自体の抗酸化能やリガンドとしての機能によるものと考えられているが、食品成分の体内動態(吸収、代謝、排泄)を考慮すると他の作用メカニズムの存在が示唆される。本研究では、様々な疾病に対し生体防御的に働くとされるが、その作用機序が明確ではないビタミンCやポリフェノール類を対象として、これら食品成分の新たな活性発現機構の解明を目的としている。これまでに細胞膜上ヒストンへの結合を介した酸化型ビタミンC修飾タンパク質の機能性について検討を行い、修飾タンパク質がプラスミノーゲン経路の活性化を阻害し、単球・マクロファージ浸潤を抑制することを明らかにしている。さらに細胞外ヒストンへの結合を介した酸化型ビタミンCおよびポリフェノール修飾タンパク質の細胞保護性について検討を行い、修飾タンパク質が遊離ヒストンと結合することで凝集体を形成し、ヒストン誘導性細胞障害を抑制することを明らかにしている。 本年度は、これまでに明らかにした修飾タンパク質の機能性発現機構のより詳細な解析を実施した。ヒストン結合活性を示す修飾タンパク質の修飾構造および結合様式についてHPLCや表面プラズモン共鳴法を用いたアフィニティ解析を行い、酸化型ビタミンC修飾によって形成される最終糖化産物(AGEs)が静電相互作用を介し、ヒストンと結合することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた、ヒストン結合活性を示す修飾タンパク質の修飾構造および結合様式についてHPLCや表面プラズモン共鳴法を用いたアフィニティ解析を行い、リジン側鎖様構造を持つビオチンペンチルアミンを用いることで、酸化型ビタミンC修飾によって形成される最終糖化産物(AGEs)が静電相互作用を介し、ヒストン結合性を示すことを明らかにした。 さらに来年度に計画していたマウス血清を用いた競合固相結合試験の結果、血中AGEs量の増加が報告されている糖尿病モデルマウスにおける血中ヒストン結合性分子の増加が観察され、生体レベルにおけるAGEsとヒストン相互作用の可能性が示唆されたことは当初計画以上の進展である。 一方で、上述したヒストン結合性修飾構造が複雑なもの(糖化産物の混合物)であり想定していた以上の解析時間を要したため、本年度に計画していたビタミンC以外の抗酸化性食品成分を用いたスクリーニング試験の実施には至らなかった。そのため研究全体としての進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後はビタミンC以外の抗酸化性食品成分におけるタンパク質修飾能とヒストン相互作用を検討し、タンパク質修飾を介した食品成分の機能性発現機構の普遍性を明らかにする。さらに本年度で確立したヒストン結合性分子測定法(競合固相結合試験)を用い、タンパク質修飾能を示す食品成分摂取時におけるin vivoレベルのヒストン結合分子量を測定することで、疾病発症における食品由来ヒストン結合分子の影響を検討する。またこれらの研究成果をまとめ、海外学術ジャーナルに投稿、掲載する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に実施予定であった抗酸化性食品成分を用いたスクリーニングアッセイを、活性修飾構造の解析期間の延長に伴い来年度の実施に変更したため。 来年度はビタミンC以外の抗酸化性食品成分によるスクリーニングアッセイを実施し、タンパク質修飾を介した食品成分の機能性発現機構の普遍性を明らかにするとともに、研究成果をまとめ、海外学術ジャーナルに投稿、掲載する。
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