研究課題
多価不飽和脂肪酸(PUFA)は肝臓での中性脂肪合成を抑制する脂質異常症治療薬であり、機序の全容は未解明である。PUFAは脂質代謝で重要な転写因子SREBP(sterol regulatory element-binding protein)の転写活性に影響を及ぼすが、SREBPに対する機序も未解明である。なお、SREBPには、よく似たSREBP-1とSREBP-2が存在する。SCAP(SREBP cleavage-activating protein)を介した共通の調節機構が知られる一方、前者は脂肪酸代謝、後者はコレステロール代謝と役割が異なる。我々は先行研究で、生きたマウス肝臓でのSREBP切断活性をin vivo imaging system(IVIS)で評価するアッセイ系を構築し、PUFAがSREBP-1切断活性を特異的に抑制する事を解明した。本研究は、脂質代謝が関与する様々な病態の解明・治療薬の開発に繋げることを目的とし、SREBP-1上のPUFA特異的作用ドメインを同定し、関連する未知の相互作用分子を探索する。SREBP-1独自の調節機構解明が本研究の核心であり、SREBP-1とSREBP-2の差異が解明出来れば、SREBPをターゲットとする分子標的薬の開発にも道が開かれ、動脈硬化性疾患を超えた他疾患の治療にも繋がる。
2: おおむね順調に進展している
申請者は、1. 肝臓におけるSREBP-1特異的なPUFA作用ドメインの絞り込みと同定、2. SREBP-1上のPUFA作用ドメインで相互作用する分子の探索を立案した。前年度に引き続き、今年度もSREBP配列を自作改変した複数のコンストラクトを用いて性質を評価している。前年度は主にin vitroの系で研究を進めたが、今年度は生体(実験動物)を用いた系にも着手することが出来た。
SREBP-1には存在し、SREBP-2には存在しないドメインを同定し、SREBP-1特異的な結合蛋白の網羅的探索を行い、機能解析に持ち込む予定である。
今年度より本格化した動物実験を展開させ、より生体に近いモデルを用いて機能解析を行いたいと考えている。
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