研究課題/領域番号 |
20K15483
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
岩岡 裕二 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (10835416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロアントシアニジン / 化学プローブ化 / 質量分析 / 蛍光HPLC分析 |
研究実績の概要 |
(+)-CatechinなどのFlavan 3-ol化合物を構造単位とした高分子ポリフェノールであるPACは質量分析におけるイオン化効率が極めて低いため,血中,食品中からのPACの検出は困難な場合が多い。PACに特異性の高い定量法の一つに4-Dimethylaminocinnamaldehyde(DMAC)による比色法がある。本定量法ではDMACがPACのA環8位と付加することで生じる青色の反応物を波長640 nmで測定することで測定試料中のPACの総量を求めることが可能である。一方で,この反応生成物の分子内にはイミニウムイオンが生じると予想されるため,DMACがPACへ付加すること,すなわちDMACによりPACのプローブ化を行うことで質量分析におけるPACの検出感度の向上が期待できると考えた。 まず,エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析によりDMACとPACの単量体である(+)-Catechin, 2量体であるProcyanidin A1, B3およびピーナッツ由来の6量体であるPAC hexamerの反応物の確認を行った。その結果,(+)-CatechinおよびProcyanidin A1,B3とDMACの反応物の生成を確認したが,PAC hexamerとDMACの反応生成物は確認できなかった。また,TLC分取によりこれら反応物の精製を試みたが,TLC展開中に速やかに変色したため,目的とするDMACとPACの反応物は不安定な分子であると予想された。次に5-(4,6-Dichlorotriazinyl)aminofluorescein (DTAF)によるクランベリー由来の高分子PACの蛍光プローブ化の報告例を基とし,(+)-CatechinおよびPAC hexamerをプローブ化し,蛍光検出によるHPLC分析を行ったが,特徴的な反応物は検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PACに対して適応可能な化学プローブ化の条件を見つけることができていない。PACは化合物間での化学構造が非常に類似している上,反応条件によっては反応中にその化学構造が変化してしまう恐れがあることから,適応可能なプローブ化試薬が限定されることが原因の1つであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PACの化学プローブ化と並行してPACと血中タンパク質複合体に着目した高感度検出法の検討も行っていく。これまでにPAC 2量体であるProcyanidin B3とウシ血清アルブミンの複合体のSDS-PAGEおよびNative PAGE電気泳動による分析例が報告されていることから,この条件を参考に予備実験として,分子量の異なる各種PACとヒト血清アルブミン(HSA)複合体の分析を行った。その結果,各PAC-HSA複合体のバンドの間でその移動度に差があることを見出しており,分子量の大きなPAC hexamerはより分子量の小さな単量体および2量体のPACと比較して移動度に明確な差があった。また,電気泳動後のタンパク質の検出法は非常に種類が多く,Western blotのようなタンパク質の特異的かつ高感度検出が可能な方法もある。従って,経口投与後の実験動物にわずかでもPACが吸収され,血中タンパク質と結合していれば,そのタンパク質とPACの複合体を介してPACの血中移行を証明できるかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はコロナウイルスによる授業の対応などにより想定以上に実験が進まなかった。 次年度の使用計画として,電気泳動に関連する試薬や実験装置などをそろえるために使用する予定である。また,実験動物の購入にも使用する予定である。
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