これまでに申請者はオレイン酸をマウス由来筋芽細胞株C2C12から分化誘導した筋管(新生筋線維)に作用させることで遅筋タイプマーカーのミオシン重鎖(MyHC)1が増加することを見出した。一方で、昨年度の研究で短趾屈筋(FDB)から単離した成熟筋線維においてはオレイン酸の添加ではMyHC1は変化しないこともわかった。本研究では引き続き、骨格筋細胞ステージに着目し、オレイン酸の骨格筋に対する作用を検証した。 筋細胞:骨格筋の筋線維タイプは1、2A、 2X、2Bの4つに分類される。FDBは2Aおよび2Xから成る筋組織であるため、オレイン酸によるMyHC1の増加が確認されなかった原因が成熟筋線維であるからか、もしくは筋線維タイプの選択性によるものかは不明である。そこで、筋線維タイプ毎に成熟筋線維を単離する技術が必要であると考えた。筋線維タイプ標識マウスを用いて、ヒラメ筋(1、2A主体)およびEDL(2X、2B主体)から成熟筋線維を分取する方法を確立した。現在、筋線維タイプ毎にオレイン酸の作用を確認している。 動物試験:オレイン酸を豊富に含むオリーブオイルを7%含む飼料をマウスに4週間摂取させた。その結果、トレッドミル走行持久力の向上が確認された。骨格筋においては、筋線維タイプの変化は認められなかったが、脂質代謝関連因子の増加が観察された。また、骨格筋のエネルギー基質である筋内脂肪の増加が確認され、これにはDGAT1が関与していることが明らかになった。続いて、マウスに10%オレイン酸混合飼料を4週間摂取させた。その結果、トレッドミル走行持久力の向上および腓腹筋で遅筋タイプマーカーMyHC1の発現量増加が確認された。以上よりオレイン酸摂取は骨格筋特性を変化させることが明らかとなった。今後は新生筋線維を形成しうる状況(運動トレーニング、筋損傷からの回復)におけるオレイン酸の作用を検討する。
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