研究課題/領域番号 |
20K15487
|
研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
小林 優多郎 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 講師 (90770561)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 牛肉 / 和牛香 / 香気成分 / ラクトン |
研究実績の概要 |
和牛肉は輸入牛肉よりも美味しいと感じている消費者が多く、その一因は、煮た和牛肉に感じる甘い、脂っぽい良い香り(和牛香)にあるとされている。申請者らの和牛香モデル実験では、その重要香気ラクトン類は酸化された脂質の加熱で生じる可能性を見出したが、その基質と生成経路は未解明であった。本研究では、和牛肉の嗜好性に貢献する和牛香の生成に必要な牛肉成分の探索を目的とした。まず、和牛香モデル実験を用いた、ラクトン基質候補の選抜を試みた。和牛香の生成における脂肪酸の関与を評価するために、食肉に含まれる脂肪酸を分析した。複数の遊離脂肪酸が和牛肉に特徴的であることを確認したため、これらの脂肪酸が香りの形成に寄与することが推察された。また、食肉の酸化状態の評価法の一つとして、ミオグロビンの酸化/還元型の分析を行い、生肉の空気下での保存時間経過に伴い、還元型(デオキシ)ミオグロビンの減少と酸化型(オキシ)ミオグロビンの増加が確認された。本実験条件では、和牛香の生成に必要な脂質の酸化反応が生じていると考えられた。そして、モデル実験の香り分析に、脂質マトリックスの影響を低減できる手法を検討した。乳製品で報告された香り抽出法を今回の和牛肉試料に応用したが、牛肉特有のマトリックス(高い脂肪含量、タンパク質)の存在による影響が大きく、香気成分の回収率は目標レベルに到達しなかった。そこで、マトリックス効果を低減できる手法をさらに追加して、和牛香の回収率の改善を検討しているところであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者らの和牛香モデル実験でを用いて、和牛肉の嗜好性に貢献する和牛香の生成に必要な牛肉成分の探索を目的として、①和牛香モデル実験を用いた、ラクトン基質候補の選抜と②モデル実験の香り分析への脂質マトリックスの影響を低減できる手法の適用を目標とした。それに対して、和牛肉に特徴的な脂肪酸の分析と牛肉の酸化状態の数値化を実施したが、香り分析では、試料のマトリックス効果が想定よりも大きいため、目標に到達していない。さらなる分析手法の改良が必要となる。
|
今後の研究の推進方策 |
申請者らのモデル実験における脂質マトリックスの影響を低減した香り分析手法のさらなる検討を引き続き行い、和牛肉に特徴的な脂肪酸が和牛香に与える影響を網羅的に解析していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、申請者らの和牛香モデル実験を用いて、ラクトン基質候補の選抜および脂質マトリックスの影響を低減できる香り分析手法の検討を試みた。重要香気成分ラクトン類を中心とした香り分析手法では、試料の前処理に想定以上の検討が必要となったために、予定した物品費の使用に至らなかった。一方で、追加の検討を既に実施しており、次年度使用額については、次年度に繰越し、牛肉の香り分析手法を可能な限り早期に構築して、和牛香の生成に必要な成分の探索を集中的に遂行する予定である。
|