本研究では、トリプシン処理によって得られたリゾチームの分解断片中に含まれる活性ペプチドおよびその配列を特定し、その作用メカニズムの解明を目的とした。本年度は前年度に引き続き、活性が認められた画分に含まれた複数のオリゴペプチドが炎症状態のマクロファージ様細胞株RAW264.7に与える影響を検討した。 これまでの検討において、トリプシン処理したリゾチーム断片をHPLCにて分画し、画分にて抗炎症効果を検討した結果、2つの画分においてIL-6産生抑制作用がみられた。これらのうち、3種類のオリゴペプチド(それぞれ7残基、8残基、12残基)を活性ペプチドの候補とし検討を継続した。インターロイキン(IL)-6産生については、3種類すべてのオリゴペプチドにおいて抑制効果が認められたが、その一方で腫瘍壊死因子(TNF)-αについては1種類のオリゴペプチドのみで抑制された。この1種類のオリゴペプチドは他の2種類に比べ、疎水性アミノ酸の種類および数が最も多く、また連続して結合しており、より疎水性が大きいと考えられた。特に、腸管炎症抑制効果が報告されているアラニンが連続して結合しており、疎水性が大きくまたアラニンのトリペプチド部分が作用を示している可能性が示唆された。今後は活性ペプチド候補の配列のうち、疎水性アミノ酸が連続している箇所に着目をし、さらなる機序解明およびアミノ酸配列の特定を進めていく予定である。
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