植物プラス鎖RNAウイルスの一種であるタバコモザイクウイルス(TMV)の複製タンパク質は、翻訳と共役してウイルスゲノムRNAの5′末端領域内の約70塩基の領域に結合し、複製に重要な複合体を形成することがこれまでに明らかとなっている。本研究では、試験管内TMV RNA翻訳複製系を利用した各種生化学的解析を行うことにより、TMVの当該複合体の形成機構の詳細の解明を目指す。 前年度の解析により、TMVゲノムの5′末端領域内の様々な配列を持つ18-33ヌクレオチドの短鎖RNA断片の添加が試験管内におけるTMV RNA-複製タンパク質断片間相互作用を阻害することが明らかとなった。 今年度は、様々な短鎖RNA断片の添加が試験管内におけるTMV RNAの翻訳・複製に与える影響を調べた。その結果、TMV RNA-複製タンパク質断片間相互作用阻害活性を有する短鎖RNA断片はTMV RNA複製も阻害した。そのうちのいくつかの短鎖RNA断片は、予想外にTMV RNA翻訳を阻害することで複製を阻害した。また当該短鎖RNA断片は、試験管内におけるルシフェラーゼRNAの翻訳も阻害した。以上から、短鎖RNA断片のTMV RNA-複製タンパク質断片間相互作用の阻害活性とRNA複製阻害活性が相関することが明らかとなった。また、一部の短鎖RNA断片は標的配列非依存的にRNAの翻訳を阻害する可能性が考えられた。
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