Wntシグナルは一般的には下流の転写因子LEF-1がβ-カテニンと結合し、EMT誘導転写因子の転写を活性化させる。しかし、本研究結果はβ-カテニンと結合できないLEF-1変異体でもEMTを誘導し、EMT誘導の境界を同定することができた。実際、臨床検体ではLEF-1とβ-カテニンの非共局在や、β-カテニン結合部位であるN末端を欠損したΔNLEF-1で皮脂腺腫瘍を形成するという報告がある。今回の研究成果は、「β-カテニン非存在下でもLEF-1によるEMT誘導が起こる」ことを意味し、「β-カテニンとは独立したLEF-1が絡む新たなシグナル伝達経路」の存在を示したことに学術的意義がある。
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