研究課題/領域番号 |
20K15500
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
熊倉 直祐 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (50815438)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ポリケタイド合成酵素 / 炭疽病菌 / 二次代謝物 |
研究実績の概要 |
植物病原糸状菌である炭疽病菌は植物への感染時に多数の二次代謝物生合成遺伝子の発現を上昇させることから二次代謝物を用いて感染を成立させることが予測さ れている。しかしながら植物病原糸状菌が感染時に分泌する二次代謝物とその植物 に対する作用は、ほとんど明らかになってない。そこで、 本研究では植物病原糸状菌の感染に寄与する二次代謝物生合成遺伝子及びその生成物の同定を目的とした。これまでに、ウリ類炭疽病菌における逆遺伝学的な解析で、病原性に寄与する複数の二次代謝物生合成鍵遺伝子を同定した。二次代謝物生合成鍵遺伝子とは、二次代謝物の骨格部分を合成する酵素であり、多くの場合同一の二次代謝物の生合成に寄与する種々の修飾酵素、トランスポーター、転写因子等をコードする遺伝子とゲノム上の同一領域で遺伝子クラスーを形成する。感染に必要であることを明らかにした二次代謝物生合成鍵遺伝子の一つポリケタイド合成酵素については、同一クラスター内のチオエステレースが同一の二次代謝物生合成に寄与することを示唆するデータを得た。ゲノム解析から23個の遺伝子クラスターを持つことが予想された。それらの内、発現パターンが二次代謝物生合成鍵遺伝子と類似した10遺伝子につい破壊したところ、チオエステレースのみポリケタイド合成酵素と同様の表現型が見られた。ポリケタイド合成酵素とチオエステレースが合成する二次代謝物は、炭疽病菌の感染に必要であることが示唆される。この二次代謝物を同定し、その機能を明らかにすれば、炭疽病菌の感染戦略の分子メカニズムの一端を明らかにすることができる。また、ポリケタイド合成酵素の阻害剤は、殺菌剤ではない農薬のシード化合物ともなり、低環境負荷の農薬開発に貢献する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、予定した数を上回る感染に寄与する二次代謝物生合成酵素を同定したため。まず、感染に必要な二次代謝物生合成遺伝子クラスターを一つ同定した。また、他にも冗長的に感染に寄与することが予想される3つの二次代謝物生合成鍵遺伝子を同定した。
|
今後の研究の推進方策 |
感染に寄与するポリケタイド合成酵素とチオエステレースが合成する二次代謝物同定を推進する。手法としては、変異体の培養液を用いた手法、麹菌の異種発現実験系を用いる。また上記二つの手法での同定が困難であった場合は、生産菌である炭疽病菌において、ポリケタイド合成酵素とチオエステレースの強制発現株を作出し、二次代謝物同定を試みる。
|