植物は太陽光を利用した光合成により成長する一方で、太陽光に由来する紫外線B (UVB) や強光による障害に常に晒されている。申請者は過去に、過剰な光エネルギーによって障害を受けた植物の細胞では、細胞内分解系であるオートファジーによって壊れた葉緑体が除去・分解されることを明らかにした。本研究計画は、この光障害時に、植物の成長を支える他のオルガネラ品質管理にもオートファジーが寄与する可能性に着目し、植物の新奇オルガネラ・オートファジー経路の同定とストレス応答としての重要性を検証した。そして紫外線障害時にはミトコンドリアとペルオキシソームがオートファジーによって積極的に分解されていることを見出した。 そして、光による障害を受けた際に機能するこれらオルガネラ選択的オートファジーに必要な因子を同定するため、当初は、オートファゴソーム膜上のタンパク質ATG8の相互作用タンパク質を共免疫沈降法により同定することを計画していた。しかしながら、損傷ミトコンドリアは短時間で液胞内へと輸送・分解されてしまうこと、また紫外線障害時には細胞死が頻繁に起きることから、生化学的な手法で、目的とするオートファジー関連因子を濃縮することは困難であると判断した。そこで2022年度は、光障害処理を含む複数のオートファジー活性化条件でRNAseq解析を行うことによって、オルガネラ・オートファジーの誘導や駆動に関わる遺伝子群の絞り込みを行った。多検体を対象としたRNAseq解析から得られた結果のデータ分析、比較解析を進めることで、そのようなストレス条件下で機能する候補遺伝子群を絞り込むことが出来た。
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