研究課題/領域番号 |
20K15502
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 和紗 京都大学, 農学研究科, 助教 (60835453)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 育種学 / コムギ / 次世代シーケンス / NAM / 倍数性 |
研究実績の概要 |
令和2年の春に、多様な四倍体コムギ22系統と四倍体コムギ系統Langdonとの交配を行い、Langdonを共通親とした22組み合わせのF1種子を得た。また、四倍体コムギとLangdonとの交雑F1を種子親、タルホコムギ系統KU-2159を花粉親として交配を行ない複数の三倍体種子を得た。ファイトトロンで三倍体を栽培し、自殖した結果、コルヒチン処理なしで合成六倍体コムギを得ることができたが、KU-2159は四倍体コムギとの交配の成功率が低く、得られた三倍体種子の発芽率も悪かった。KU-2159を花粉親とした交配では十分な系統数の合成六倍体を作出できなかったため、比較的交配の成功率が高いと報告されているタルホコムギ系統(KU-2098)を花粉親として用いて、令和3年の春に再度、複数の四倍体コムギのF1とタルホコムギの交配を行い、令和3年の夏に三倍体種子をファイトトロンで栽培し合成六倍体を作出する予定である。 四倍体コムギを種子親、タルホコムギを花粉親とした場合の三倍体種子の胚乳は四倍体の種子よりも小さくなることが明らかとなっており、本研究で当初計画していた胚乳(ゲノム構成 AABBD)からのDNA抽出は発芽率の低下を招く恐れがあるため、NAMの遺伝子型データをより低コストで取得できる手法の検討を行なった。ゲノム中の限られた領域を効率良く次世代シーケンサーでシーケンスする手法の一つである、MIG-seq(Suyama and Matsuki 2015)はddRAD-seqなどの手法と比較して得られる多型数が少ないと報告されているが、コムギに対して本手法を適用することによって、比較的低コストで、QTL解析やアソシーエーション解析に十分な多型が得られることが明らかとなった。今後は、NAM集団のジェノタイピングに必要十分な取得データ量の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年の秋から三倍体の栽培を行う予定であったが、花粉親のタルホコムギ系統の変更を行なったため、令和2年の秋からの圃場栽培では当初の予定を変更して、四倍体コムギのF1とタルホコムギの栽培をしており、当初の計画より遅れが生じている。一方で、令和3年の春に得た三倍体種子をファイトトロンで令和3年の夏の間に育成することによって、令和3年の秋からの栽培までに、合成六倍体種子を得る予定であり、研究期間内に当初の研究目的を達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
多様な四倍体コムギ系統22系統と四倍体コムギ系統LangdonのF1およびタルホコムギ系統KU-2098を2020年の秋から栽培している。令和3年の春に、四倍体コムギのF1とタルホコムギとの交配を行い複数の三倍体種子を得る。必要に応じて、三倍体種子に対して胚救済を適用し、2021年の夏の間にファイトトロンで合成六倍体コムギの種子を得る。令和3年の秋から合成六倍体の栽培を行い、令和4年の春に合成六倍体NAMの表現型調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、合成六倍体コムギNAM集団の一部の系統に関して、次世代シーケンス解析による遺伝子型取得を進める予定であったが、花粉親のタルホコムギの系統を変更したため、次年度以降に、新たに作出した合成六倍体コムギNAM集団の次世代シーケンス解析を行う予定である。そのため、148,837円を次年度に繰り越し、次年度の経費と合わせて次世代シーケンス解析に使用することを計画している。
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