研究課題/領域番号 |
20K15504
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
殿崎 薫 岩手大学, 農学部, 助教 (20749494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生殖的隔離 / エピゲノム / ゲノムインプリンティング / イネ / 胚乳 / 野生イネ |
研究実績の概要 |
これまでの研究から、栽培イネと野生イネの雑種胚乳では、インプリント遺伝子の片親特異的な発現パターンに異常が生じることを明らかにしてきた。本年度は、これら雑種胚乳で異常を示すインプリント遺伝子が、どのようなエピゲノムに制御されるのかを調査した。昨年取得した栽培イネの胚乳におけるエピゲノム情報と比較した結果、雑種胚乳で発現パターンに異常が生じるインプリント遺伝子のほとんどが、抑制型のヒストン修飾であるH3K27me3に制御されていることが明らかになった。また、H3K27me3修飾に関わるポリコーム複合体の変異体系統(emf2a変異体)の胚乳でも、同様のインプリント遺伝子の発現パターンの異常が観察されたことから、種間交雑で見られる胚乳発生の異常は、雑種胚乳におけるH3K27me3レベルの変化が関与していることが示唆された。 さらに、雑種胚乳におけるH3K27me3レベルの変化が胚乳発生の異常に関与するかを検証するために、emf2a変異体と野生イネとの種間交雑を実施したところ、雑種胚乳の発生が正常化した。通常、栽培イネと野生イネの種間交雑から得られる雑種種子の生存率は20%ほどであるが、emf2a変異体と野生イネの種間交雑から得られる雑種種子における生存率は約70%と有意に上昇しており、雑種胚乳のH3K27me3レベルを低下させることで、生殖的隔離を緩和できることを明らかにした。なお、エピゲノム解析のため雑種胚乳のサンプリングを予定していたが、新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言による県外移動が規制されたため実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していた雑種胚乳のサンプリングを実施できなかった。しかし、emf2a変異体を用いた解析から雑種胚乳におけるH3K27me3修飾が重要なエピゲノム異常であることを明らかにすると共に、emf2a変異体を用いることで、雑種胚乳の発生を正常化させ、生殖的隔離を緩和することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
雑種胚乳におけるエピゲノム解析を実施し、実際に雑種胚乳においてH3K27me3修飾にどのような変化が生じているのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画ではエピゲノム解析のサンプリングおよびそのライブラリー調整を予定していたが実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度には実施予定である。
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