サツマイモ二倍体野生種(Ipomoea trifida)の根の肥大性に関わるQTL(qRT1)を特定するとともに、qRT1に関与する原因変異および遺伝子を推定した。 本課題では、まず初めに肥大根を形成する系統(0431-1)と肥大根を形成しない系統(Mx23Hm)由来の交配集団(BC1F1)を用いてQTL-seqを行い、リファレンスゲノムItr_r2.2のchr06上にqRT1を特定した。続けて戻し交配とマーカー選抜によりqRT1の領域を約380kbの範囲にまで絞り込み、BC5F3系統(NIL4-RT1)を用いてqRT1の効果を検証した。qRT1の原因遺伝子を特定するためにNIL4-RT1のDe novoアセンブリを行い、qRT1には約70kbの構造変異が存在することを明らかにした。さらにRNA-seqを用いてNIL4-RT1の構造変異内に座上する候補遺伝子ItRT1を特定した。このItRT1を特異的に増幅するプライマーを用いて、遺伝資源のItRT1の有無を確認したところ、サツマイモおよび 4-6倍体野生種は全てItRT1を有するのに対し、2倍体野生種はItRT1が存在する系統としない系統で別れた。また、分子系統解析の結果、ItRT1には3つのパラログがあり、これらは近縁のマメアサガオやアサガオにも存在するが、ItRT1(IbRT1)自体はサツマイモ野生種系統の一部とサツマイモにのみ存在することが示唆された。サツマイモにおいてもIbRT1の遺伝子発現量を調査した結果、梗根および塊根では発現していたが、細根や地上部の各器官での発現は認められなった。以上のことから、サツマイモ野生種およびサツマイモにおいてItRT1(IbRT1)は根の肥大に関与することが示唆された。
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