研究課題/領域番号 |
20K15510
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
倪 斯然 東京農業大学, 農学部, 助教 (90826835)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | サキシマボタンヅル / 威霊仙 / 薬用植物栽培 / 種苗生産 / 品質評価 |
研究実績の概要 |
本研究は生薬「威霊仙」の国産化を目指し、日局収載の1原植物で沖縄地方に分布するサキシマボタンヅルを関東地方など自生地外で栽培し、一連の栽培生産技術を確立することを目的としている。研究計画として、種子の発芽特性の解明、挿し木法による種苗生産の検討、品質評価に用いられる成分定量法の確立、関東地方における栽培条件の探索などに関する実験を行う。令和2年度は4年計画の1年目である。 研究計画に従い、発芽実験は宮古島市、東京農業大学厚木キャンパス及び富山県富山市における栽培植物から採取できた種子を用いて行い、日数を要するがいずれも高い発芽率を示した。また、宮古島市での調査を12月に実施し、採取した茎を用いて厚木キャンパスで挿し木実験を行い、これまでのデータをも加味すると挿し木は秋から春まで可能であることが判明した。一方、大量の挿し穂の確保は困難であり、かつ作業に時間と労力がかかるため、大規模栽培に向けての種苗生産には挿し木法よりも発芽苗の方が適していると判断した。以上、サキシマボタンヅルの栽培は種子生産から栽培収穫まで、関東地方でも完結できる可能性が示唆された。 次にサキシマボタンヅルの根の収穫時期を検討するため、神奈川県伊勢原市の圃場で露地栽培実験を開始した。また、窒素肥料条件が根の収量に与える影響を検討するため、厚木キャンパスでの露地栽培を開始した。宮古島市における自生株の根の外面が黒色であるに対して、栽培1年目の株の根は黄色であり、また一部の株で葉が枯れても黒変しないものを確認した。また、厚木キャンパスでは夏期に発生するキイロハバチが栽培における主な害虫であるが、防虫ネットを設置することで防除できた。なお、根を収穫するまでの栽培期間を2年に設定しており、現在栽培を継続中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は宮古島市での調査を年に複数回実施することを計画したが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、令和2年度には現地調査は1回のみに止まった。一方、実験に必要な種子は現地の研究者に採取を依頼し、また厚木キャンパスと富山市内の栽培株からも十分量の種子が得られたため、発芽実験は計画通り進行した。栽培実験においては準備段階で作成した実生苗を用い、収穫時期と窒素肥料による影響を検討するための栽培が順調に進行している。 以上、栽培実験を中心に展開する本研究課題では実験株数が重要であるが、十分量が確保され、概ね当初計画通り順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は1年間栽培した株と宮古島市で採取した野生株の根を用い、オレアノール酸とヘデラゲニンの定量分析を行い、栽培株と自生株間に相違があるか否かを明らかにする。また、中国薬局方に記載されているオレアノール酸の定量法では試料溶液の作成に6時間以上を要するので、より短期間で抽出できる方法を検討する。また、当初計画した宮古亜熱帯農場での栽培実験に必要なサキシマボタンヅルとセンニンソウの実生苗を準備したので、現地調査と合わせて定植する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行の影響で当初計画した宮古島市での調査が1回しか実施できず、旅費に余剰金がでた。今年度は流行の状況を判断しつつ、宮古島市に行けない場合は調査地を変更するなど、臨機応変に対処する。
|