研究課題/領域番号 |
20K15510
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
倪 斯然 東京農業大学, 農学部, 助教 (90826835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サキシマボタンヅル / 威霊仙 / 薬用植物栽培 / 種苗生産 / 品質評価 |
研究実績の概要 |
本研究は生薬「威霊仙」の国産化を目指し、沖縄地方に分布するサキシマボタンヅルの生息域外における栽培技術の確立を目的としている。令和4年度は4年計画の3年目である。 これまでの研究で、関東地方に移植したサキシマボタンヅルから発芽能力を持つ種子(痩果)が得られることが明らかになり、昨年度は関東地方におけるサキシマボタンヅルの採種適期及び播種までの保存期間について検討した。栽培地の東京農業大学厚木キャンパスでは7月中旬から8月中旬に開花が観察された後、70日~100日の間、10日毎に採取した種子の重量は徐々に減少することが明らかになった。それらの発芽率については現在調査中である。また、2021年10月に採取した種子について、保存期間1ヶ月の発芽率は33%で、その後上昇傾向が観察され、4ヶ月の発芽率は51.5%であったが、以降の発根率は低下傾向に転じた。以上のことから、サキシマボタンヅルの種子繁殖は採種後翌年の3月までに播くのが適切であると判断した。 薬用部位である根の収穫時期を検討するため、1年間育苗した実生苗をワグネルポットで栽培し、植物の生育状況及び根の収量を調査した結果、関東地方において11月にサキシマボタンヅルの地上部が枯れ始める頃に収穫するのが最適であると判断した。また、生育地がサキシマボタンヅルの根の収量に与える影響を調査するため、宮古島と厚木キャンパスで露地栽培実験を行った結果、厚木で1年間栽培した個体の根の平均重量は宮古島個体の約2倍となった。 根の化学的品質評価について、中華人民共和国薬典に記載されたTLC法を用い、市販の「威霊仙」、宮古島に自生するサキシマボタンヅルの野生品、関東地方栽培のサキシマボタンヅルのそれぞれの根の含有成分を比較した。すべてのサンプルにオレアノール酸のスポットが確認され、また含有パターンに殆ど差がないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関東地方で路地栽培すると、サキシマボタンヅルは開花後70日以降に種子採取が可能になることを明らかにし、現在、より適切な採種時期を検討中である。播種時期については翌年の春(3月)までは発芽率が高く、かつ根の収穫時期については11月が適切であることが明らかになった。以上のことから、サキシマボタンヅルは生息域外である関東地方でも種苗生産から根の収穫まで可能であることが明らかになり、10月中旬から採種、冬期~春期までに播種育苗、5月中旬に定植、11月下旬に根を収穫するのが適切であると判断した。中華人民共和国薬典記載の方法に準じて栽培品の化学成分を調査したところ、市場品や本種の野生品と殆ど差がなかった。以上、概ね当初計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
サキシマボタンヅルの採種適期についてさらに精査し、開花後いつ頃から発芽能力を示すかを調査する。また、発芽までに要する日数を短縮するため、低温湿層処理の効果を検討する。引き続きワグネルポットを用いた栽培実験を行い、肥料(NPK)の効果を調査し、また宮古島と関東地方におけるサキシマボタンヅルの生育状況の異同についてさらに精査する。品質評価に関してはこれまでの栽培実験で得られた収穫物の分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
品質評価に関する一部の分析実験の進捗が遅れたため、必要な器具や試薬などの購入費を次年度に持ち越した。
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