研究課題/領域番号 |
20K15513
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
川崎 洋平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 研究員 (30782601)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダイズ / 収量 / 熟性遺伝子 / 収穫指数 / 分配 |
研究実績の概要 |
ダイズにおいて熟期に関係するE3遺伝子を晩生型にすることにより、温暖地の晩播において多収を実現できる可能性がこれまでに示唆されている。その一方で標播においてはE3遺伝子の晩生型系統で着莢や収穫指数が低下する可能性も示唆されている。E3遺伝子は光のR/FR比の受容体に関係することが明らかとなっているが、ダイズにおいて生殖生長期の植物体が感知するR/FR比や日長が収量形成や同化産物の分配に及ぼす影響は未だ明らかとはなっていない。そこで本研究では圃場条件において熟期に関係する遺伝子のNILsを対象にLEDを用いて人工光を照射し、生殖生長期の日長と光質がダイズの収量形成に及ぼす影響の解明を試みた。 今年度は2つの実験を行った。「エンレイ」背景のNILsを対象に、まず晩播における薄暮時のLED光照射がE3遺伝子とe3遺伝子の準同質遺伝子系統(E3NILs)の収量形成に及ぼす影響を調査した(実験①)。その結果、晩播における薄暮時のLED光照射処理はE3遺伝子の晩生型NILに対して生育ステージや収量構成要素に影響を及ぼすことが明らかとなった。また分光放射計等による調査からLED光が影響を及ぼす距離や光量についても明らかとなった。次に晩播における昼間のR/FR比変更処理がE3NILsの収量形成に及ぼす影響について調査した(実験②)。昼間のLED照射によるR/FR比変更処理では生育ステージ、収量構成要素ともに対照区との間に明瞭な差は観察されなかった。E3遺伝子が晩生型の系統は薄暮時のLED光に強く反応したことから、日長が収量形成に関係している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り実験を遂行し、「エンレイ」背景においてE3遺伝子のNILsの生育ステージや収量構成要素に強く影響を与える処理方法を明らかにすることができたため。さらに、分光放射計等による調査から、LED処理の効果範囲が明らかとなったため、次年度以降の試験設計の効率化を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
「エンレイ」背景においてE3遺伝子のNILsの生育ステージや収量構成要素に強く影響を与える処理方法を明らかにすることができたことから、今後異なる遺伝的背景のE3NILsにおいても同様の調査を行い、遺伝的背景が及ぼす影響についても調査を行う。また、気象条件や光質の違いの影響についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
LED照射用の圃場資材が、想定よりも安価で購入・準備できたため、次年度使用額が生じた。次年度は赤色光・遠赤色光以外の光の影響について考察・検討するため、異なる波長のLEDを新たに追加で購入する。さらに品種の遺伝的背景の影響について調査を行う。またLED光が乾物生産性に及ぼす影響についても調査を行う。
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