研究課題/領域番号 |
20K15516
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
榎 真一 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (40759312)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 甲州ブドウ / ブラシノステロイド / 栄養成長 / シュート伸長 / Vv90D1 |
研究実績の概要 |
茎の長さは植物の大きさ、収量、果実品質に影響する要因であるが、その制御メカニズムは複雑である。極めて茎(新梢)の長い甲州ブドウのような品種は慣行栽培に適さず、樹勢が強くなるため作業者の新梢管理の労力が大きく、栄養成長へ栄養を取られやすく果実の収量、品質などの生殖成長量も低下しやすいという問題がある。これらの課題解決のために新梢成長メカニズムの理解は急務である。本研究では、過去のモデル植物での研究を参考に、植物ホルモンの一つであるブラシノステロイド(BR)およびその合成遺伝子であるVv90D1が、ブドウの新梢伸長に関与するという仮説を立てた。これを基に、甲州ブドウをモデルとしたブドウの茎伸長制御技術の開発を目指し、この新規仮説の分子レベルでの解明を行っている。 研究開始の本年度は、①甲州ブドウのゲノム解析による品種の遺伝的特性の把握、②Vv90D1過剰発現シロイヌナズナの作製と初期世代における表現型解析、③圃場試験でのブドウ新梢成長の要因分析を行った。 その結果、①一部進行中であった甲州ブドウのゲノム解析を完了できた。甲州は新梢伸長への関与が考えられる「植物細胞壁組織」の遺伝子などにおいて、基準品種よりも非同義置換を多く持つなど、遺伝的特徴を明らかにした。②圃場試験においてブドウの新梢伸長とVv90D1遺伝子発現に相関性が観察された。この遺伝子の機能解析のために作製したVv90D1シロイヌナズナにおいても、第一世代で茎長などの栄養成長の増加が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要な、甲州ブドウのゲノム解析、Vv90D1遺伝子の過剰発現シロイヌナズナの作製に注力した。圃場試験については、Vv90D1遺伝子と茎伸長の相関性を見出すことに成功した。研究実績の概要に記載するように、本年度の目的をほぼ達成する事ができた。得られた遺伝情報の解析に着手し、作製した形質転換体第一世代以降において目的の形質が観察されるなど、研究は滞りなく進捗している。以上の理由から「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、甲州新梢における遺伝子群の網羅的発現解析を完了させ、甲州の品種特性であるゲノム配列とBR合成経路の活性化(Vv90D1を含む遺伝子群の発現量)との関連性を明らかにする。 形質転換したシロイヌナズナの世代促進を進め、第三世代のホモ個体での形質と遺伝子機能解析を行う予定である。 BR合成阻害剤による伸長抑制効果の検証は、メカニズム解明のためブドウに先立って、シロイヌナズナを用いて行う事とした。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度完了したゲノム解析が当初予定より解析が容易な品種であったため追加費用などが必要なく当初予定より安価で行う事ができた。また圃場試験で予定していた、BR阻害剤散布によるブドウの新梢抑制技術の実証試験は、シロイヌナズナでの予備試験に留めたため、差額が生じた。 これらは次年度以降、詳細なBR合成経路の遺伝子発現解析や、BR阻害剤を用いたシロイヌナズナおよびブドウでの本試験のための費用とする予定である。
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