研究課題
茎の長さは植物体のサイズ、果実の品質や収穫量などに直結する重要な要因である。しかしながら、ブドウの茎伸長制御機構は未だ不明瞭である。「甲州ブドウ」のような極めて茎の長い品種は慣行栽培に適しておらず樹勢が強くなる。このため、作業者の茎管理の労力が大きく、また栄養成長へ植物栄養が偏る為、果実の収量、品質などの生殖成長量も低下しやすいという問題がある。これらの課題解決のために茎伸長機構の解明は急務である。本研究では、過去のモデル植物での研究を参考に、植物ホルモンの一つであるブラシノステロイド（BR）およびその合成遺伝子の一つであるVvCYP90D1が、ブドウの茎伸長に関与するという仮説を立てた。これを基に、甲州ブドウをモデルとしたブドウの茎伸長制御技術の開発を目指して、この新規仮説を分子レベルで解明した。研究成果として、令和2年度は①甲州ブドウのゲノム解析による遺伝的特性の把握を完了した。その結果、他品種と比べて甲州は新梢伸長への関与が考えられる「植物細胞壁組織」の遺伝子などにおいて、基準品種よりも非同義置換を多く持つなどの遺伝的特徴を明らかにした。令和2，3年度は、②RNA-seq解析により、基準品種に比べて甲州の葉および茎において、BR合成経路の各合成遺伝子なかでもVvCYP90D1の発現量が有意に高いことを明らかにした。シロイヌナズナでの遺伝子機能解析により、VvCYP90D1の過剰発現はBR含量を増加させ、栄養成長量を増加させる効果を示した。以上より、ブドウの強樹勢品種におけるBR合成遺伝子Vv90CYPD1と茎伸長の関連性が明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Plant Physiology and Biochemistry.
巻: 196 ページ: 993-1001
10.1016/j.plaphy.2023.02.052
