研究実績の概要 |
低温処理前後の種子を用いて比較トランスクリプトーム解析を実施した.解析の結果,1サンプル当たり約4.56Gb,約45,630,000リードのシーケンスデータを取得した.また,低温処理後に発現量が低下した遺伝子としては,ABA合成の律速酵素である9-cis-epoxycarotenoid dioxygenase(NCED)遺伝子,ABA応答性遺伝子の発現を誘導する転写因子ABSCISIC ACID-INSENSITIVE-5(ABI-5)遺伝子,ジベレリン(GA)のシグナル伝達を抑制させるDELLA protein GAI(GAI)遺伝子などが選抜された.一方,発現量が増加する遺伝子としては,ABAの不活性化に関与するabscisic acid 8'-hydroxylase(CYP707A)遺伝子,活性型GAを合成するgibberellin 20 oxidase 2 like(GA20ox)遺伝子,GA20oxを活性化させるprotein GAST1-like(GAST1)遺伝子などが確認された.リアルタイムPCRによる発現解析の結果,ABAの合成に関わるNCED-3遺伝子,ならびにGA応答の抑制に関わるGAI遺伝子の発現量が,両休眠の打破時に著しく低下していることが確認された.一方で,ABAの不活性化に関与するCYP707A-1遺伝子と,活性型GAの生合成に関与するGA20ox遺伝子は低温遭遇時間の増加に伴い発現量が増加していた.これらの遺伝子発現パターンが両休眠期におけるABAとGA含量の変化と関係しており,両休眠の制御に共通する遺伝子であることが示唆された.また,他のCYP7070A遺伝子やprotein GAST1 like遺伝子は種子と葉芽で異なる発現量の推移を示した.
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