研究課題/領域番号 |
20K15520
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
田中 秀幸 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (30738779)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サクラ自発休眠 / 開花促進 / 自発休眠打破 / 植物ホルモン |
研究実績の概要 |
近年の地球温暖化により,サクラの開花が不安定になっており,サクラの安定開花技術の確立が求められている.また,サクラは切り枝としても需要が高く,早期開花技術の開発も求められているが,ほとんどの品種で未確立である.様々なサクラ品種において早期開花が可能となれば,日本の花卉生産の発展が期待されるため,サクラの休眠機構の解明と,開花制御法の確立を本研究の目的とした.一般的に,花芽の休眠はアブシシン酸の蓄積により誘導されると言われているが,サクラについては未確認である.さらに,申請者は休眠にはアブシシン酸だけでなく,サイトカイニンも関与していると考えている.そこで,1)サクラの休眠導入および打破に関するアブシシン酸とサイトカイニンの相互作用について調査するとともに,休眠関連遺伝子の動向について詳細に解明し,2)その成果を応用した休眠打破・早期開花技術の開発を検討する.本年度は,1)について,冬に開花する‘冬桜’や年2回開花する‘十月桜’に加えて,‘染井吉野’を含む初春開花の数品種を供試し,8月から3月まで定期的に花芽を採取した.採取した花芽の植物ホルモン分析を行ったところ,初春開花の数品種では12月までアブシシン酸含量の増加を確認した.しかし,‘冬桜’および‘十月桜’においては,アブシシン酸含量の有意な変化は見られなかった.以上の事より,冬に開花する2品種については,アブシシン酸の蓄積が起こらないために,休眠に導入しないことが示唆された.2)について,‘冬桜’や‘十月桜’を台木として接ぎ木することで,穂木品種の休眠を制御できるのか検討するため,6-7月に‘冬桜’および‘十月桜’の挿し木を行った.しかし.両品種において発芽に至らず,台木確保が出来なかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)について,アブシシン酸含量の測定はでき,一定の成果を得られたが,サイトカイニン含量測定についてほとんどの品種で検出できず,アブシシン酸とサイトカイニンの相互作用について明らかにできなかった.そのため,サイトカイニン分析については,外部委託により測定することで早急な成果獲得を目指し,当初目的を達成する予定である. 2)について,挿し木を行ったが,発根しなかったため台木準備が出来ず,本年度接ぎ木を行うことが出来なかった,
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として,1)について,本年度採取した品種において,サイトカイニン分析を進めるとともに,関連遺伝子の発現解析も行う.それに加えて,新たな供試品種においてもサンプリングおよび各種測定を行い,休眠機構の解明を進める.2)について,申請者自身による挿し木を行うことに加え,苗業者と協力して台木を準備することで,効率よく接ぎ木苗の確保を行い,次年度のサンプリングに繋げる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度,植物ホルモン分析の進捗が遅れたため,関連遺伝子の発現解析が出来なかった.次年度,その発現解析を行うために次年度繰り越しとした.
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