研究課題/領域番号 |
20K15521
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 友大 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50758422)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 硫化水素 / 亜熱帯果樹 / 光合成速度 / クロロフィル蛍光 / 栄養生長 |
研究実績の概要 |
宮崎大学の露地圃場において100 L鉢で栽培されているアボカド(品種:ベーコン)の5年生接木苗10個体を供試して試験をおこなった.4-5月に開花した花に受粉したが十分な数の果実が着果しなかったため,6月に全て摘果した.5個体に対して,10月2日から3月6日まで,週に1回0.5 mMのNaHS水溶液を1鉢あたり1 L施与した.NaHSは水に溶解するとH2Sを発生する試薬である.残りの5個体は対照区としてNaHS施与と同じ日に1 L/鉢の水道水を施与した. 光合成速度はNaHS施与によって,1月および3月の低温条件下においては促進された.一方で,11月の測定では,対照区の光合成速度のほうが高かった.気孔コンダクタンス・SPAD値・Fv/FmにもNaHS施与の影響はみられなかった.したがって,低温下において硫化水素施与によって光合成速度を高めることは可能であり,果実品質の向上につながる可能性も考えられた.果実品質に関しては今後の課題としたい. 同様にして,パッションフルーツに冬季に硫化水素を施与したところ,光合成速度が30%程度上昇した.またFv/Fmも高く保たれた.したがって,硫化水素施与によってPSIIの損傷が抑えられ,光合成速度が高く保たれたものと推察される.パッションフルーツに関しても晩秋に光合成を促進することで果実品質を向上できる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度は,アボカドおよびパッションフルーツの低温下における光合成速度は,硫化水素施与によって促進されることを示した.当初の予定とは試験をおこない順番が異なるものの,当初2年間をかけておこなう予定であった成果を1年で達成したことになる.したがって,当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,パッションフルーツとアボカドの生存可能な最低気温におよぼす硫化水素施与の影響を明らかにする.また昨年度の試験では,メカニズムについての測定が不十分であったので,この点に関してもさらに試験をおこなう. また,予定にはなかった他の熱帯・亜熱帯果樹に関しても同様の試験をおこなう.
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