研究課題/領域番号 |
20K15521
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 友大 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50758422)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 亜熱帯果樹 / 熱帯果樹 / 低温耐性 / 硫化水素 / 光合成速度 / 葉の損傷 |
研究実績の概要 |
2022年7-8月にパッションフルーツに硫化水素を施与し,硫化水素施与が高温ストレス耐性におよぼす影響を明らかにした.高温ストレスは低温ストレスとは真逆のストレスと考えられがちだが,そのストレス耐性のメカニズムには共通のものが多く,硫化水素施与によるストレス耐性メカニズムを考察するための知見が得られる.高温ストレスが非常に強いに日のみ,硫化水素施与による光合成速度の維持効果があった.PSIIの最大量子収量(Fv/Fm),SPAD値,電解質漏出(EL)に対しては効果が見られなかった.この結果は,低温ストレスの結果(2021年度実施)と類似している.硫化水素施与によるストレス耐性の向上は,光合成に関する酵素の活性を高めることによるものの可能性が高い.一方で,ストレスによる細胞やPSIIの損傷を抑制する効果は極めて小さいことが示唆された.
2022年10-11月に熱帯果樹カカオの低温ストレス耐性に対する硫化水素施与と遮光の影響を調べた.その結果,硫化水素による効果はなかったが,遮光処理委よって,PSIIの損傷が抑制され光合成速度が維持された.したがって,2021年度の結果と同様に,カカオに対しては硫化水素施与による葉の損傷抑制や光合成維持作用は見られないことが示された.一方で遮光によるストレス軽減効果は顕著であった.
以上のことから,硫化水素施与によって熱帯・亜熱帯果樹の低温などのストレスに対する葉の損傷を抑制する効果は極めて限定的であることが示唆された.一方で,条件によってはストレス下での光合成を促進する効果があることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに,パッションフルーツ,アボカドにおいて低温ストレス下での光合成速度が硫化水素によって維持されることを示した.一方で,パッションフルーツにおいては,葉の損傷を軽減する効果はみられないことを示した. また当初お予定にはなかったが,熱帯果樹のカカオにおいては硫化水素施与による影響が極めて限定的であることや,パッションフルーツの高温ストレス耐性に対しても,低温ストレス耐性と同様の効果があることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
アボカドの低温ストレス耐性,とくに低温による葉の損傷に対する硫化水素施与の影響を明らかにする.
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