研究課題
これまで収集していた野生グリに加えて、北海道、四国、九州北部、太平洋沿岸のサンプリングをを行い、日本全国を網羅する野生グリの収集を行った。MIG-seqにより栽培グリと野生グリの遺伝的構造解析を行なったところ、九州のクリがその他の地域のクリと遺伝的に大きく異なり、また栽培グリの遺伝的構造が様々な地域の野生グリに遺伝子流入していることが示唆された。北海道のクリは東北地方のクリの遺伝的構造に加えて、栽培グリの遺伝的構造を多く持っていたため、東北地方から北海道に人為的にクリが伝播した可能性が考えられた。四国の野生グリは西日本の野生グリと近縁であったが、西に進むにつれて九州地方の遺伝的構造を持つ個体が増加した。在来品種集団について、各野生グリ集団と遺伝子流動解析を行ったところ、関東の在来品種については在来品種から関東の野生グリ、関東の野生グリから在来品種の両方向の遺伝子流動が検出された。一方で丹波地方の在来品種については、在来品種から関西の野生グリへの一方向のみへの遺伝子流動が検出された。コアレセント解析により、集団間の分岐を推定したところ、約1000世代前(約2万年前)に西日本、品種、東北の3つのクラスターが同時期に合着し、約2500世代前(約5万年前)に九州のクラスターが合着したと推定された。以上のことから、関東の栽培グリは関東の野生グリから比較的少ない世代で栽培化されたのに対し、古い栽培の歴史を持つ丹波地方の在来品種は、非常に長い年月をかけて成立した可能性が示唆された。野生グリと栽培グリの形質データを取得し、72個体について全ゲノム解析により詳細な遺伝子型を決定した。ゲノムワイドアソシエーション解析により果実重に複数の有意なSNPが得られており、栽培化に関連する遺伝子領域を推定した。
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Scientia Horticulturae
巻: 306 ページ: 111336
10.1016/j.scienta.2022.111446