シロイヌナズナWRKY33のプロモーターを用いたWRKY33-LUCレポーターシロイヌナズナ系統およびそのEMS変異集団を用いて、病原菌由来スフィンゴ脂質Pi-Cer Dに対する変異体スクリーニングおよび原因遺伝子単離をLumi-Map法により実施した。その結果、SRK型受容体キナーゼRDA2およびセラミダーゼNCER2を単離した。解析の結果、Pi-Cer Dは植物細胞外においてNCER2により分解され、9-メチルスフィンゴイド塩基に変換された。9-メチルスフィンゴイド塩基を含む各種スフィンゴイド塩基の植物に対する抵抗反応誘導活性を評価したところ、9-メチルスフィンゴイド塩基がもっとも高い活性を示した。スフィンゴイド塩基は真核生物に広く保存される脂質であるが、スフィンゴイド塩基の9メチル構造は糸状菌や卵菌に特有の構造であり、植物には存在しない構造であることから、植物はこの9-メチル構造を微生物の目印として識別していると考えられた。RDA2は各種スフィンゴシン と結合することをSPR法により明らかにしたが、結合強度は9-メチルスフィンゴイド塩基が最も高く、スフィンゴイド塩基の9-メチル構造がRDA2との結合に重要である可能性を示唆した。また、Pi-Cer DはRDA2と結合できないことから、細胞外において、Pi-Cer DがNCER2により切断されることが必須であることを示した。 rda2およびncer2の変異体は植物病原性卵菌Hyaloperonospora arabidopsidisに対する抵抗性が低下したことから、RDA2およびNCER2は病原菌のスフィンゴ脂質を認識することにより抵抗性に寄与していることを示した。
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