研究実績の概要 |
本研究では、ウリ科植物に感染する炭疽病菌のタンパク質糖鎖修飾機構および感染時の細胞壁ストレス応答と病原性との関係性を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の研究を実施した。 1. CoPap2の細胞壁糖鎖修飾への関与の評価:糖鎖修飾関連因子CoPap2の脂質リン酸結合モチーフをアミノ酸点変異させた変異型CoPap2(R78A, H93A)を構築した。R78A, H93A導入株はcopap2破壊株と同様に病原性欠損となり、脂質リン酸結合モチーフがCoPap2の病原性における機能に必要であり、CoPap2は脂質脱リン酸化酵素として機能することが示唆された。また、蛍光タンパク質付加によりCoPap2と糖鎖修飾が行われる小胞体の細胞局在性を検討し、CoPap2が栄養菌糸生育時および感染器官形成時に小胞体膜で機能することを明らかにした。 2. WSC遺伝子破壊が細胞壁完全性および病原性へ与える影響の評価:細胞壁ストレスセンサーCoWSC1, CoWSC2およびトランスクリプトーム解析によりCoPap2制御下にある可能性が示唆された推定細胞壁構成成分CoWSC3, CoWSC4, CoWSC5, CoWSC6を同定し、遺伝子破壊株を作出した。cowsc1破壊株は細胞壁ストレスに対する感受性が増大し、病原性がやや低下した一方、cowsc2, cowsc3, cowsc4, cowsc5, cowsc6破壊株は顕著な表現型を示さなかったことから、ウリ類炭疽病菌の細胞壁完全性および病原性にはCoPAP2 >CoWSC1 >CoWSC2, CoWSC3, CoWSC4, CoWSC5, CoWSC6の順番で寄与の度合いが高いことが示された。
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