研究課題/領域番号 |
20K15530
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
伊川 有美 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特任助教 (30866968)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 白葉枯病 / キシロース代謝 / 病原力遺伝子 |
研究実績の概要 |
イネ白葉枯病菌のhrp遺伝子群は、病原力に必須であるtype Ⅲ分泌装置の構築に関わる。筆者の研究グループでは、本遺伝子群がキシロースによって発現誘導されること、キシロース代謝関連遺伝子群の転写抑制因子XylRがhrp遺伝子群の制御因子の蓄積抑制に関わること、さらにキシロースがXylRを不活化し、キシロース代謝関連遺伝子群の発現とHrpXの高蓄積を介してhrp遺伝子群の発現を活性化することを明らかにしていた。 キシロース存在下におけるXylRの不活化に伴うキシロースの細菌細胞内への取込みと、その代謝の活性化がHrpXの蓄積抑制に関わると仮説を立て、XylRが特異的に結合するモチーフ配列をもつキシロース代謝関連遺伝子について単独及び複数破壊株を作出し、hrp遺伝子群の発現を調べた。その結果、それらの破壊株における発現に野生株と顕著な差はなかった。このことから、上記の仮説は棄却された。一方、XylR欠損条件下では、キシロース非存在下でもHrpXの蓄積増加とhrp遺伝子群の発現増加がみられたことから、XylR欠損/不活化条件下で発現増加する遺伝子が、キシロース代謝の活性化以外の作用を介してHrpXの蓄積を増加させる可能性を考えた。現在、この仮説の検証を行っている。 糖代謝を含め、様々な遺伝子の発現を制御するグローバル転写制御因子Clpは、細菌のセカンドメッセンジャーであるcyclic-di GMPの合成と分解によってその活性が調節される。cyclic-di GMPの合成または分解に関わる因子であるXOO_3074の破壊株において、hrp遺伝子群の発現上昇と、キシロースを糖源とする培地における増殖の低下を見出した。これは、本因子がhrp遺伝子群の制御因子であり、キシロース代謝関連因子であることを示唆しているため、本因子についても本研究課題の中でその制御機構の解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請当初、キシロース存在下におけるXylRの不活化に伴うキシロースの細菌細胞内への取込み、およびその代謝の活性化がHrpXの蓄積抑制に関わるとの仮説を立て研究を進めていたが、これまでの実験結果はそれを否定するものであった。そこで、「XylR欠損/不活化条件下で発現増加する遺伝子が、キシロース代謝の活性化以外の作用を介してHrpXの蓄積増加をもたらす」との新たな仮説を立て、研究計画を再構築する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
「XylR欠損/不活化条件下で発現増加する遺伝子が、キシロース代謝の活性化以外の作用を介してHrpXの蓄積増加をもたらす」との新たな仮説を検証するため、キシロース非存在条件下(グルコースを唯一の糖源とする培地)においてHrpXの高蓄積およびhrp遺伝子群の発現増加が見られるXylR欠損株を親株とし、さらにXylR欠損により発現増加する遺伝子を欠損させた二重変異株を作出し、同条件下でhrp遺伝子群の発現増加が見られなくなる変異株を選抜し、その責任遺伝子の機能およびhrp遺伝子群の発現制御機構の解明を行なう。また、新たにhrp遺伝子群の発現とキシロース代謝に関わる因子として見出したXOO_3074について、それらへの関与の分子機構を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大により研究の遅延が生じ、また参加を予定していた学会等への参加がなくなったため、その分を本年度使用する予定である。
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