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2023 年度 実施状況報告書

非マメ科根粒着生植物パラセポニアにおける根粒共生と防御応答の選択的起動機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K15532
研究機関東洋大学

研究代表者

宮田 佳奈  東洋大学, 生命科学部, 助教 (10637143)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードパラセポニア / 植物―微生物間相互作用 / キチン誘導性防御応答 / LysM受容体型キナーゼ / 根粒菌共生 / 樹木
研究実績の概要

パラセポニアは非マメ科であり根粒菌と共生する木本植物である。パラセポニアのLysM型受容体キナーゼ、PanLYK3は、根粒菌共生とキチン誘導性防御応答という対照的な2つの応答において重要な機能を持つ。パラセポニアの根粒菌共生は、PanLYK3とPanNFP2という受容体が複合体を形成することで誘導されると考えられている。しかし、PanLYK3と共に防御応答に関わっている受容体は未だ明らかになっていない。本研究では、キチン誘導性防御応答に関わる受容体として、LysMモチーフを持つ3つのタンパク質を候補として挙げている。それらの候補遺伝子の欠損変異体を作成し、防御・共生における応答の評価を行うことにより、PanLYK3と複合体を形成してキチン誘導性の防御応答の起動に関わる受容体を同定し、機能解析を通 して防御応答と共生応答が選択的に起動されるメカニズムの解明を目指している。
昨年に引き続きパラセポニアの欠損変異体の作出を行った。昨年度までの研究から、形質転換に用いているベクターに大幅な欠損が認められた為、新たにベクターを作成し直し、形質転換を行った。その結果、候補受容体の欠損変異体を複数ライン獲得することに成功した。現在は得られた変異体のシュートを、実験に用いるために十分な量が得られるまで増やしている段階である。次年度は、この候補受容体の変異体を用いて、防御応答の指標である活性酸素応答と下流因子のリン酸化解析、および根粒菌共生や菌根菌共生への影響評価を行い、論文を投稿する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、本実験に用いるパラセポニアの生育や防御応答及び共生応答に関する実験条件の確立などが終了しており、本プロジェクトはゲノム編集技術を用いてPanLYK10変異体の作出を行い、その表現型解析を行うのみとなっていた。しかし、昨年度の時点ではかなりの数の形質転換を行ったにもかかわらず、期待していた変異体を得ることはできていなかった。その原因について調べたところ、オランダから移譲されたベクターが向かい合う同一なターミネーター配列を持つためにヘアピン構造を作り、大幅な欠損が起きていることが明らかになった。この点を踏まえて、昨年度新たにターミネーター配列を変えたベクターを作り直し、形質転換を行った。その結果、PanLYK10の開始直後に大幅な欠損を持つ変異体を、今回新たに複数ライン得ることが出来た。現在は獲得されたPanLYK10変異体を組織培養で増やしており、これを用いて、共生応答及び防御応答の評価を行い、その結果を論文としてまとめる予定である。
本年度はさらに、パラセポニアの根粒菌共生の評価方法に関して改良を行った。ワーゲニンゲン大学のグループでは培養液を含ませたパーライトを、直径20cm程度の円形のポットに入れたものにパラセポニアを植え、大規模な温室で栽培を行っていたが、同様の形で実験を行うと大学内の栽培施設のスペースを圧迫してしまうことから、省スペースの実験系が必要であると考えていた。本研究ではパーライトの代わりにバーミキュライトを用い、7cm×7cm×25cmのプラントボックス内で生育することで、十分な根粒形成が起こることを明らかにした。今後は、この手法を用いてパラセポニアの根粒菌共生の評価を行う予定である。

今後の研究の推進方策

現在、作出に成功したPanLYK10の変異体を組織培養で増やしており、それを用いて本年度中にキチン誘導性の防御応答の評価、および共生応答の評価行う予定である。さらにこれらの結果について、早急にまとめ論文投稿を行う。
また、本研究で用いているパラセポニアを用いて、現在東北大学の共生ゲノミクスグループと共同研究を進めている。今後は、本研究のみならず、パラセポニアおよびその近縁種であるトリマを試料として用いることで、様々な分野の研究と共同研究を展開していきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

本研究では、初年度にパラセポニアの植物体を得るための手続きが感染症拡大の影響を受け遅延し、スタートをさせることが出来ず、その影響で予定より1年程度の研究の遅延が見込まれている。さらに、形質転換に関するベクターのトラブルにより、候補受容体の欠損変異体の獲得が遅れており、その評価に利用するための費用が後送りになっていた。本年度、欠損変異体が複数ライン獲得されたことから、次年度に関してはこれらの植物体の表現型解析のために試薬が多く必要になる。さらに、研究代表者の所属が移動したことにより、遺伝子組み換え実験に関係する諸手続き等に関しても時間がかかり、実験の遅延が起こっている。また、所属場所の異動に伴いこれまで使用できていた実験器具に関しても、新たに購入する必要が出てきた。当該研究費は、変異体の防御応答、共生応答の評価に用いる実験試薬、および実験継続の為に必要となる実験器具の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Wageningen University and Research(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      Wageningen University and Research
  • [雑誌論文] Roles of Arbuscular Mycorrhizal Fungi for Essential Nutrient Acquisition Under Nutrient Deficiency in Plants2024

    • 著者名/発表者名
      Miyata Kana、Umehara Mikihisa
    • 雑誌名

      Arbuscular Mycorrhizal Fungi and Higher Plants

      巻: - ページ: 123~148

    • DOI

      10.1007/978-981-99-8220-2_6

  • [雑誌論文] How does OsCERK1 switch between immunity and symbiosis functions in rice?2023

    • 著者名/発表者名
      Miyata Kana、Kaku Hanae
    • 雑誌名

      Physiological and Molecular Plant Pathology

      巻: 125 ページ: 102010~102010

    • DOI

      10.1016/j.pmpp.2023.102010

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Variety-dependent accumulation of glucomannan in the starchy endosperm and aleurone cell walls of rice grains and its possible genetic basis2023

    • 著者名/発表者名
      Zamorski Ryszard、Baba Kei’ichi、Noda Takahiro、Sawada Rimpei、Miyata Kana、Itoh Takao、Kaku Hanae、Shibuya Naoto
    • 雑誌名

      Plant Biotechnology

      巻: 40 ページ: 321~336

    • DOI

      10.5511/plantbiotechnology.23.0809a

    • 査読あり
  • [学会発表] 粒菌共生・菌根菌共生で重要な役割を果たすSYMRK/DMI2の新規モチーフの発見2024

    • 著者名/発表者名
      宮田佳奈,細谷萌恵,古田珠玲,淺井佑香,高岡瞭,和田翼,藤枝怜太,賀来華江
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] OsSYMRKとOsCERK1による菌根菌共生開始メカニズムの解析2023

    • 著者名/発表者名
      細谷 萌恵,蒋 文迪,高岡 瞭,古田 珠玲,淺井 佑香,赤松 明,武田 直也,賀来 華江,宮田 佳奈
    • 学会等名
      第32回植物微生物研究会
  • [学会発表] Evolutional trajectory of SYMRK/DMI2 function in AM symbiosis2023

    • 著者名/発表者名
      Kana Miyata, Moe Hosotani, Akira Akamatsu, Naoya Takeda, Wendi Jiang, Ryou Takaoka, Naoto Shibuya, Hanae Kaku
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Plant Biology 2023 (TJPB2023)
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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