研究課題/領域番号 |
20K15534
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
林 正幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 研究員 (80837609)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 害虫防除 / 天敵 / 相利共生 / アブラムシ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アリの共生者に対する学習行動を操作し土着天敵としての機能を人為的に引き出す新規な害虫防除法を開発することである。アリは全世界的に分布する節足動物群集における強力な捕食者であり、農生態系においては多くの害虫種の密度を低下させる。その一方で、農業害虫であるアブラムシなどの甘露排出昆虫を保護し、他の土着天敵の活動を抑制してしまうため、アリの存在は農業現場ではむしろ問題視され防除の対象とすらなる。最近の研究により、アリと甘露排出昆虫の間には潜在的な利害対立が存在し、両者の関係が動的かつ条件依存的であることがわかってきた。アリにとって価値の異なる甘露排出昆虫が同所的に共存するとき、アリは価値の低い甘露排出昆虫への保護を中断し、ときには捕食するようになる。本研究では、こういったアリの甘露排出昆虫に対する意思決定機構を利用し、アリにとって至高の“人工アブラムシ”をアリに提供することで、アリの甘露排出昆虫への保護を中断させ捕食性天敵としての機能を強化する手法を構築する。初年度の2020年度は、人工アブラムシのレシピを作成するために、12種のアブラムシの甘露と体表炭化水素(アリのアブラムシ識別因子である匂い成分)を分析し比較した。その結果、アリの好むアブラムシ種はエルロースやメレジトースなどの三糖類を多く含む甘露を排出すること、アリの随伴性と体表炭化水素中のメチルアルカンの比率に強い正の相関があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響を受け、出張を伴う野外でのサンプル・データ収集が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
アブラムシの甘露と体表炭化水素の分析を継続して進めていくとともに、アリの各炭化水素成分に対する識別能および学習持続性を検証する。これらの結果から、最適な人工甘露と匂い成分の組み合わせを探査していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響を受け、予定していた出張を伴うサンプリングが一部行えず、次年度以降に実施するため。
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