研究成果の概要 |
エリサンとカイコの集中産卵性を支配する遺伝子基盤を解明するべく, 同じ属(genus)の種でありながら, 異なる産卵様式を持つシンジュサンとクワコを用いた異種間交配系を利用し, 順遺伝学的な解析を実施した. その結果, エリサン(シンジュサン), カイコ(クワコ)ともに, Z染色体の相同な領域(約1Mbpの領域)が責任領域であることが確認された. その領域中に存在する遺伝子のうち, 脳で特異的に発現しており, かつエリサン-シンジュサンの間でアミノ酸配列に相違が認められるものを探索した結果, 1遺伝子が条件を満たすことが判明した. 現在, この遺伝子をノックアウトした系統を樹立中である.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
産卵行動は, 子孫の生存率に直接影響を与えうる. 昆虫は, 基本的には子育てをしないため, 産卵場所の選定は非常に重要である. 全滅の憂き目を避けるために様々な場所に卵を分散させる方がよい場合もあれば, 孵化直後に, 多くの兄弟姉妹と1ヶ所に固まりながら行動できるように, 1ヶ所に卵を集中させて産んだ方がよい場合もあるだろう. 本課題の研究成果によって, 卵を分散させるか, あるいは集中させるか, という形質は, Z染色体上のたった一つの遺伝子によって支配されていることが判明した. この成果は, 昆虫の産卵行動の進化を解き明かす上で, 非常に重要な発見である.
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