研究課題/領域番号 |
20K15554
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
河合 清定 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 学振特別研究員 (50846334)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 亜熱帯気候 / 海洋島 / 気候変動 / 固有種 / 水分生理 / 木材解剖学 |
研究実績の概要 |
今年度は十分な現地調査を行うことができなかったため、取得済みのデータを用いて解析を行った。枝木部における水輸送能力と糖貯蔵量は、乾燥下での樹木の生死を決める重要な生理的な要因である。一方、これらの特性がどのような木部の解剖学的特性に支配されているかはわかっていない。そこで、本研究では、小笠原諸島父島に生育する主要15樹種を対象に、夏季乾燥期における枝木部の水輸送能力と糖貯蔵量を定量し、関係する木部の解剖学的特性を探索した。その結果、木部中の生細胞である柔細胞の割合が高い枝ほど、木部中の糖貯蔵量が大きいことがわかった。また、木部中の道管の割合が高く、柔細胞の1種である放射柔細胞の割合が低い枝ほど木部の通水性が高かった。さらに,軸方向柔細胞と随伴柔細胞の割合が高い材ほど,乾燥下での水切れの度合いが高く,乾燥耐性が低いことがわかった。以上より,木部の組織形態、特に柔細胞の形態を調べることで,樹木種の乾燥に対する生理応答を理解できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
夏季乾燥期において小笠原諸島父島での現地調査を行うことができなかったため、進捗がやや遅れている。一方、今年度の2月に短期間の予備調査を行うことができ、調査個体の選定や研究環境の整備に充てた。
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今後の研究の推進方策 |
夏季乾燥期において小笠原諸島父島での現地調査を予定している。計画通り、葉の形態や乾燥耐性が異なる小笠原樹種6種を対象に、葉の通水性、水ポテンシャル、気孔コンダクタンス、光合成速度の日変化を測定し、乾燥下での葉の通水性の低下パターンを明らかにする。今年度と同様に渡島が困難だった場合に備え、亜熱帯気候に属する他の地域で、異なる樹種を対象に同様の調査を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため野外調査を十分に遂行できなかったため当該助成金が生じた。当該助成金は翌年度の野外調査旅費に充てる予定である。
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