今年度は、乾燥下における葉の水輸送に関わると予想される生理・形態特性の測定を行った。具体的には、小笠原諸島父島において、High Pressure Flow Meterを用いて葉全体および葉脈内外の通水抵抗を測定した。また、葉の強度の指標として、引張試験と曲げ試験を行い、葉身の弾性率を評価した。これらの特性は大きな種間変異を示した。葉全体の通水抵抗は、日中を通じた通水欠損度合と負の相関を示した。ここから、葉の最大通水能力と日中を通じた通水維持能力にはトレード・オフの関係があることが示唆された。 本課題の遂行により、葉通水性の環境応答には大きな樹種間差があり、その応答性は、葉の生理・形態特性と密接に結びついていることが明らかになった。浸透調節能力が高い葉は、日中を通じて通水性が減少しにくい傾向があった。これらの結果は、変動環境における樹木ならびに森林の生理機能の応答予測に貢献する。
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