本研究では、調査国マレーシアで野外調査を実施することが主要な研究内容だが、2020年以降新型コロナウイルスの世界的な流行が原因で、渡航制限がかかったり、現地研究協力者が所属するサバ州森林局森林研究センターでの深刻な人員不足の影響を受けて、研究の継続が極めて困難になった。 2022年から2023年にかけて、短期間の渡航で予備実験をおこなった。本研究で使用する予定だった小型発信機を栽培品種の果実の果肉に挿入して、森林内で発信機の探索をおこなった結果、発信機を探知できるのは半径200メートル以内だと分かった。移動距離が長い大型動物に小型発信機を挿入した大型種子を食べられた場合、散布距離の推定のために運搬された発信機を探索するのは、極めて難しいことが示唆された。 これらの結果から、散布距離の推定は、餌台の近くで待機して、採食した動物をできる限り目視で個体追跡する必要があることがわかった。ゾウやクマなど接近が危険な動物に関してはこうした方法を用いることができないので、小型発信機を機種を変更するなど、発信機を操作する必要がある。 研究目的は達成できなかったが、今後の研究に役立つ知見を得られたと考えられる。
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