本課題では、樹種や太さが異なる保持木を対象とし、それらの木を利用する森林性甲虫を調査することで、どのような木を伐採地に残すことが保持林業の生物多様性保全効果を高めるのかを検証した。調査は北海道空知総合振興局管内の保持林業の実証実験地において行った。調査対象木は、6種の生立木(カンバ、ミズナラ、トドマツ、ヤチダモ、シナノキ、ホオノキ)と立ち枯れ木(カンバ)、コントロール(近くに保持木がない地点に金属杭を設置)とし、それぞれ10数本(箇所)ずつ選定した。森林性甲虫類の捕獲には衝突板トラップを用い、トラップは各調査木に3つずつ設置した。捕獲調査は2020年8月、2021年7月・8月、2022年7月・8月の計5回実施した。捕獲調査と併せて、森林性甲虫類の各保持木の利用を考察する要因として、調査木に存在する微小環境(樹洞、枯死部、キノコの有無など)の調査を行った。 カミキリムシ類とクワガタムシ類、オオキノコムシ類、ハナムグリ類の4グループを対象とし、各グループの出現種数と合計個体数、各種の個体数が保持木の樹種および太さ(胸高直径)によって変化するのかを検証した。この結果、樹種に対する応答は、グループごとに異なり、特定の樹種で種数と個体数が多いグループ(クワガタムシ類-ミズナラ、オオキノコムシ類-カンバ立ち枯れ木)、樹種の影響は全体では明瞭でないが、特定樹種への強い選好性を持つ少数の種を含むグループ(カミキリムシ類)、樹種の影響を受けないグループ(ハナムグリ類)が存在することが明らかとなった。また、どのグループにおいても保持木の太さの影響は限定的であることも明らかとなった。
|