本研究課題では,シイタケ菌,菌食性キノコバエ,その天敵寄生バチを対象として,菌類による対菌食者防御システムの解明を目指した。寄生バチは,シイタケ菌糸やキノコバエの食害を受けた菌糸の匂いに誘引される。シイタケ菌糸は物理的損傷を受けると,植物でも報告されているモノテルペンアルコール類などの揮発化合物を増加させた。キノコバエの被食により,さらに菌類特有の化合物(未同定)が増加することもわかった。これら化合物に対して,寄生バチは触角の電気生理学的応答を示した。シイタケ菌は植物と同様の物質に加え,菌類独自の物質を併用して菌食性昆虫の天敵寄生バチを誘引し,食害を抑制している可能性を示した。
|