研究課題
本研究は、樹木に吸われやすい放射性セシウムが樹幹流により土壌深部へ供給されること、土壌深部に存在するこれら放射性セシウムが樹木に吸収されることを明らかにする。これらから、材の放射性セシウム濃度変化は、樹幹流による放射性セシウム供給が引き起こしていることを解明する。最終年度は、福島県川内村のスギ林2サイトとコナラ林1サイトを対象に、材と土壌の放射性セシウムと安定同位体セシウムの濃度比を用いて、土壌から樹木へ吸収される放射性セシウムの吸収深度を推定した。その結果、コナラの辺材は落葉層と鉱質土壌層0-5 cmの間の浅い深度から放射性セシウムを吸収しており、スギの辺材は鉱質土壌層0-5cmと5-10 cmの間の深い深度から放射性セシウムを吸収していることが明らかになった。研究期間全体を通じて、樹幹流には懸濁態よりも溶存態の形態の放射性セシウムが多く存在し、樹幹流の流れ込む位置において、土壌中の溶存態の放射性セシウム量が多い傾向が見られた。また、樹木が吸収できる土壌中の溶存態と交換態の放射性セシウムは、特にコナラにおいて樹幹流により土壌深部へも供給されていたが、コナラは土壌表層から放射性セシウムを吸収していると推定された。これらのことから、樹幹流により樹木が吸収可能な放射性セシウムは土壌深部へ供給されているが、樹幹流による放射性セシウムの土壌深部への供給が、必ずしも樹木の放射性セシウム吸収や材の放射性セシウムの濃度変化傾向に影響している訳ではないことが明らかになった。
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