本研究ではHymenoscyphus sp.(以下、本菌)をモデルとして根部内生菌の分散生態に関する知見を深めることを目的とした。国内で本菌子実体を収集し、580分離菌株を確立した。培養性状の違い及び複数遺伝子座に基づく系統解析から、今回収集した菌株が種複合体を形成していることが示唆された。このうち最も広範囲に分布した一系統に着目し、SSRマーカーを用いた集団遺伝学的な解析に供した結果、有意な集団遺伝構造が検出されたほか、集団間の地理的な距離が大きいほど遺伝的な距離が大きく、本菌が地上生の近縁種と異なる胞子分散の様式や分散能力を持つことが示唆された。
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