研究実績の概要 |
ナノセルロースは植物由来の高強度繊維であり、炭素繊維やガラス繊維に代わる持続可能な樹脂補強材料として利用が期待されている。ナノセルロースの補強効果を樹脂中で発揮するためには、両者をナノレベルで均一に複合化する必要がある。本研究では、有機溶媒を用いずにナノセルロースと樹脂を均一複合化する材料加工技術開発を行う。研究方法として、これまでに申請者が確立している完全水系プロセスによって、均一なナノセルロース/樹脂マスターバッチの開発を行い、マスターバッチ/樹脂の溶融混練により均一な複合材料の調製を目指す。本年度は、最も高収率でマスターバッチが得られる条件を見出した。まず、木材由来漂白クラフトパルプに対してTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)触媒酸化を行い、機械処理によって、TEMPO酸化ナノセルロースを得た。このナノセルロース水分散液に重合開始剤を含むモノマーを添加し、エマルションを形成した。このエマルションを加熱することで、モノマーの重合を行った。これにより最終的にナノセルロースおよびポリマーが水中に懸濁したサンプルを得た。反応終了後はメンブレンフィルターによるろ過・洗浄により、ナノセルロース/ポリマー複合体を回収した。得られた複合体を乾燥することで収率の計算を行った。収率に対する、①開始剤添加量、②反応温度および③反応時間の関係を調べ、最適な反応条件を得た。得られた複合体の、熱成形によりペレット状マスターバッチを調製した。
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