ナノセルロースは植物由来の高強度繊維であり、炭素繊維やガラス繊維に代わる持続可能なポリマー補強材料として利用が期待されている。ナノセルロースの補強効果をポリマー中で発揮するためには、両者をナノレベルで均一に複合化する必要がある。本研究では、有機溶媒を用いずにナノセルロースとポリマーを均一複合化する材料加工技術開発を行う。研究方法として、これまでに申請者が確立している完全水系プロセスによって、均一なナノセルロース/ポリマーマスターバッチの開発を行い、マスターバッチ/ポリマーの溶融混練により均一な複合材料の調製を目指す。本年度は、前年度までに調製条件を最適化したマスターバッチを用いて、溶融混練によって樹脂との複合化を行った。複合材料中のナノセルロ―ス濃度は0.1~2%となるように希釈した。得られた複合材料断面の電子顕微鏡観察を行ったところ、ナノセルロースが樹脂中で均一に分布していることが確認できた。また、複合材料の引張試験をおこなったところ、ナノセルロース濃度の増加に伴って、複合材料の弾性率および強度が増加した。しかし、それにともなって複合材料の破断伸びは減少し、脆化したことが確認できた。今後、この課題を解決するため、ナノセルロース/樹脂界面の相互作用を制御する必要がある。また、複合材料の熱膨張率測定を行ったところ、ナノセルロース濃度の増加に伴い、熱寸法安定性が向上した。これは、ナノセルロースが樹脂中で分散し、効率的にネットワーク構造を形成したためと考察できる。
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