(1) 前年度までに得られたデータから、舞鶴湾におけるマアジの地先産卵時期と推定された7月の新月大潮の日に、マアジの産卵時間を推定するための採水調査を実施した。主産卵場と考えられる西湾のマリーナ横付近にて、3時間おき24時間のマアジ環境DNA濃度をモニタリングした。その結果、環境DNA濃度は日周変動をを示しており、特に21:00~24:00の時間帯に、昼間(6:00~18:00)よりも有意に環境DNA濃度が高まることが観察された。この環境DNA濃度の日周変化は特定の時間帯におけるマアジの産卵行動の発生に起因すると考えられ、特に濃度が高くなった21:00~24:00がマアジの主な産卵時間帯であることが示唆された。
(2) マアジの地先産卵の証拠を得るため、上記の環境DNA分析による産卵時間帯調査と同日に、湾内の採水地点付近にて調査船からのプランクトンネットを用いた浮遊性魚卵の回収を実施した。プランクトンネットは湾内に設けた3ライン上を各3分、3回ずつ曳き、回収物の中から直径約0.5~1.5mmの魚卵を計約300粒収集した。そのうち270粒について、個別にDNAを抽出し、魚類ユニバーサルプライマーを用いたPCRとシーケンスを実施し、魚種を判定した。その結果、2粒がマアジ卵であることが確認され、7月に舞鶴湾内でマアジが地先産卵を行ったことが実証された。
(3) 一連の研究で得られた成果を第70回日本生態学会仙台大会にて発表した。また、現在は国際誌で成果を公表するため、原稿の執筆を進めている。
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