研究課題
地球環境変動が生物に与えるインパクトを把握することは,将来の生態系・環境リスクを評価する上で重要となる.沿岸性底生生物の多くは浮遊幼生期を持ち,石灰化した骨格をもつ海産無脊椎動物では初期生活史における海洋酸性化・地球温暖化への応答について,これまで多くの研究がなされてきた.一方,海洋で生活環の一部を過ごす通し回遊をおこなう河川性無脊椎動物への影響については,ほとんど知見がない.また,成体生息環境である島嶼河川における水温の上昇が各種の分布域拡大や各地の群集構造に与える影響は未知数である.本研究では,海洋でのプランクトン幼生期をもつ通し回遊性無脊椎動物が地球温暖化・海洋酸性化にどのように応答するのかを予測するため,炭酸カルシウムの殻をもつ回遊性貝類(特に河川性アマオブネ科腹足類)をモデル生物群として,飼育実験・生態調査および遺伝子解析により検証し,回遊動物の卓越する島嶼河川生態系における将来的な環境リスクを評価することを目的とする.本年度は回遊性巻貝類について,西太平洋域で採集した標本を用い,各地域における各種分布情報の詳細な把握を進めた.また,遺伝子マーカーを用いて,河川性アマオブネ科腹足類各種の分散能力について推定した.さらに日本の各地域における出現種数を記録し,死滅回遊記録などの情報をまとめた.幼貝を含む国内外の種について,バーコーディング解析を進め,リファレンスデータを蓄積した.
すべて 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Zoological Studies
巻: 62 ページ: 43-43