本年度の主な成果は以下の通りである。 昨年度に引き続き、水産研究・教育機構水産技術研究所養殖部門まぐろ養殖部と協力し、クロマグロ孵化データの収集を行った。特に、異なる細胞期の画像データおよびその卵のふ化情報のデータ、及び複数の卵が一枚の画像中に写ったデータ(バルクデータ)とそのふ化データの収集を行った。さらに、これらのデータと深層学習を用いて、異なる細胞期の画像データから卵のふ化を予測するモデルの構築に取り組んだ。その結果、ふ化後1日程度経過したデータでも一定のふ化の予測が可能であることが判明した。 研究期間全体を通じて、クロマグロの産卵直後の卵データ及び各卵の卵質(ふ化の状況及び無給餌生残日数)の情報を多数収集し、深層学習を用いることで卵が映った画像のみから高精度に卵質(ふ化するか否か等)を予測できる手法を開発した。このシステムは卵が映った画像から卵部分だけをFaster R-CNNを用いて抜き出し、抽出した卵画像から深層ニューラルネットワークVGG16を用いて卵質を予測する。学習の結果正常ふ化予測では正解率0.856、無給餌生残日数予測では正解率0.804を達成した。予測精度は細胞質あるいは卵の輪郭に焦点が合っている時に高精度になる傾向が見られた。さらに、この予測精度は、熟練した養殖研究者4名による正常ふ化予測の精度より高いことを確認した。また、卵質予測に重要な部位を可視化するために、Grad CAMを用いて予測に重要な部位の算出を行うシステムを構築した。解析の結果細胞質や卵の輪郭に注目が集まっており、形が崩れている部位も重視されていることが判明した。他にも、バルクの卵画像とその卵質データも収集することで、バルクの卵画像から卵質を予測する深層学習ベースのモデルの構築にも成功した。
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