研究課題/領域番号 |
20K15589
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
仲村 康秀 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 特任助教 (70830735)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放散虫 / ケルコゾア / フェオダリア / DNAメタバーコーディング / 単細胞PCR / 単細胞動物プランクトン / 海洋生物 / バイオミネラリゼーション |
研究実績の概要 |
環境DNA分析や生態系モデルやなどで海洋生態系の変化をモニタリングする為には、各種のDNA配列とバイオマスに関する情報が必要不可欠である。しかしながら、海洋生態系において高いバイオマスを持つ事が示唆されているリザリア類に関してはこれらの情報が欠落している為、従来の研究ではリザリア類を介した物質循環・食物網の経路が考慮されておらず、この経路の影響が過小評価されている可能性がある。以上の背景から、本研究では自然環境中におけるリザリア類の種多様性、分布およびバイオマスを解明する事を目的としている。 令和3年度には国内・海外における広範囲なフィールド調査を予定していたが、新型ウイルスの感染拡大により島根県・鳥取県内のみの調査へ計画を変更した。リザリア類の試料を得る為、宍道湖・中海にてプランクトンの種組成を毎月定点観測し、顕微鏡観察と環境DNA分析に供して、(リザリア類を含む)プランクトン組成の季節変化を明らかにした。この定点観測の成果は、汽水域研究会や海洋生物シンポジウムにて公表した。また、リザリア類は主に古環境復元の分野で研究されてきたため、プランクトンと古環境復元に関する公開シンポジウムを企画・開催し、前述の定点観測の成果等を公表した。 さらに、自身や愛媛大学や国立科学博物館などの共同研究者が過去に採集した試料からリザリア類を拾い出し、DNA分析、マイクロX線CTおよび走査型電子顕微鏡などの分析に供した。結果として、これまで所属不明であったリザリア類の1群 (oroscenids) が、放散虫下門の中で特異な生態的・形態的特徴を持つ事を解明し、この1群を放散虫の新しい目として記載する論文を学術雑誌で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分布とバイオマスの解明については、フィールドにおける定点観測と共同研究者から提供を受けた試料により、研究に必要な試料は安定的に入手できている。また、公開シンポジウムを開催し、本成果を公表する事ができた。種多様性の解明に関しては、リザリア類放散虫亜門の新しい目を記載する論文を公表した。以上の事から、本研究は現在まで順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は引き続き島根県内などでフィールド調査を行う予定である。また、国立科学博物館と北海道大学水産科学院に滞在して (5月, 8月を予定)、過去の航海で得られたプランクトン試料を顕微鏡観察し、分布、バイオマスおよび種多様性に関するデータを蓄積する。水中画像データをさらに解析して、原著論文を執筆する。さらに、水・堆積物試料に対して、次世代シークエンサーによるDNAメタバーコーディングを進め、様々な環境に生息するリザリア類の分布と種多様性に関する論文を執筆する。研究成果は3つの国内学会 (プランクトン学会、海洋学会および原生生物学会)、1つの国際学会 (INTERRAD 2022) にて公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
リザリア類の種同定のため令和3年度内に全ての試料に対してDNA分析を行う予定であったが、分析をしたところ結果が不十分であった(得られたDNA配列の質が悪かった)為、計画を変更して再度DNA分析を行うこととしたため、次年度使用額が生じた。
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