研究課題
環境DNAメタバーコーディングや生態系モデル等で海洋生態系の変化を観察する為には、各生物のDNA配列とバイオマスに関する情報が必要不可欠である。しかしながら、海洋生態系において高いバイオマスを持つ事が示唆されているリザリア類に関してはこれらの情報が欠落している為、従来の研究ではリザリア類を介した物質循環・食物網の経路が考慮されておらず、この経路の影響が過小評価されている可能性がある。以上の背景から、本研究では自然環境中におけるリザリア類の種多様性、分布およびバイオマスを解明する事を目的としている。令和4年度には国内・海外における広範囲なフィールド調査を予定していたが、新型ウイルスの感染拡大により島根県・鳥取県のみでの調査を行った。前年度と同様に、宍道湖・中海にて、プランクトンの種組成を毎月定点観測した。宍道湖・中海や過去に北半球から得られた水試料に対してDNAメタバーコーディングを行い、(リザリア類を含む)プランクトン組成の季節変化と分布を明らかにした。このようにして得られた成果について2本の原著論文(共著)を執筆・公表し、また国内外の各学会にて公表した。リザリア類の分布と生態を解明するため、過去に撮影された水中カメラ画像を解析し、リザリア類が微小な甲殻類と共生関係を築く現象(通称「リザリアライダー現象」)を解明し、リザリア類が家畜的に甲殻類に利用されている可能性を見出した。このデータについて1本の原著論文(共著)を執筆・公表した。また、リザリア類に対するこれまでの研究が評価され、日本原生生物学会から奨励賞を授与された。
2: おおむね順調に進展している
フィールドにおける定点観測等により、リザリア類の分布とバイオマスの解明については明らかになりつつあり、原著論文や学会発表等で成果を公表し始めている。また、リザリア類の生態に関しては、水中カメラ画像の解析から新たな知見が得られ、こちらについても原著論文等で成果を公表している。以上の事から、本研究は現在まで順調に進展していると言える。
令和5年度は引き続き島根県内などでフィールド調査を行う予定である。水中画像データの解析をさらに進めて、リザリア類の生態と分布に関する原著論文を執筆する。さらに、水・堆積物試料に対して、次世代シークエンサーによるDNAメタバーコーディングを行い、様々な環境に生息するリザリア類の分布と種多様性に関する論文を執筆する。研究成果は3つの国内学会 (プランクトン学会、海洋学会および原生生物学会)、1つの国際学会 (JpGU) にて公表する予定である。
リザリア類の種同定のため令和4年度内にDNA分析を行う予定であったが、一部の試料について結果が不十分であった(得られたDNA配列の質が悪かった)為、計画を変更して再度DNA分析を行うこととしたため、次年度使用額が生じた。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
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