マサバ稚魚について、成長速度そのものと食べられやすさを検証するメソコスム実験を実施した。具体的には、体サイズが同じでありながら日齢の異なる2つの群(高成長群・低成長群)を、捕食者の入った水槽に同時に入れ、捕食者の胃から、どちらの群の個体がどれくらい出てくるかを検証した。2つの群の識別は、耳石核に施したALC標識の有無に基づいて行った。捕食者としては、追尾型のマサバ幼魚と待ち伏せ型のカサゴという、捕食タイプの違う2種を用いた。実験の結果、マサバ幼魚は成長速度に関わらず体長の小さな個体を、カサゴは体長に関わらず成長速度の速い個体を選択的に捕食していることがわかった。昨年度までの研究から、同じ体サイズのマサバ稚魚では高成長個体の方が運動能力は高いことが判明しているため、この結果は運動能力の高・低とは矛盾するものである。目の前に現れた個体を選択的に捕食するカサゴでのみ、成長速度依存的な捕食が観察されたことから、高成長個体は危険を冒してより多くの餌を獲得するという、ハイリスク・ハイリターン戦略を採っている可能性が考えられた。本成果は、高成長に伴う代償を明示するものであるため、成長速度の基づいた加入量予測の精度向上に資するものであると言える。
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