水圏に生息する魚類においては、体内と体外との間に浸透圧差が存在することにより、体表を介して常に水やイオンが移動している。しかし鰓・腎臓・腸・膀胱からなる浸透圧調節器官が機能することで、体液浸透圧は常に一定に維持されている。本研究では、各種のイオンの中でも、とりわけ魚体内に最も多く含まれるカリウムイオンに着目し、その代謝経路の解析を目指すこととした。その際には狭塩性淡水魚であるゼブラフィッシュをモデル魚として用い、カリウムイオンチャネルの分子構成と発現パターン、生理機能の解明に取り組んだ。本年度は以下の通り研究を行い、成果を得た。 昨年度に引き続き、本年度もコロナウイルスの蔓延に伴う影響により、実験の実施には制限が生じた。その状況下で、本年度はまず、昨年度のin silico解析のデータをブラッシュアップを行った。その結果、特定のカリウムチャネルは幾つかのグループにおいて重複および欠損していることが明らかとなった。こうした背景にはどのような要因があり、重複や欠損がどのような影響をもたらしているのか、その解明が期待される。続いて、ゼブラフィッシュおよび比較対象魚としてメダカも加え、組織別・発生段階別解析用のテンプレートを作製し、データ解析を目指した。得られたデータから、それぞれのカリウムイオンチャネルが主に機能する組織を、把握することができた。このデータをふまえ、モルフォリノオリゴによるKD実験を行うことで、各カリウムチャネルがもたらす生理機能の詳細が解析されることが期待される。
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