研究課題/領域番号 |
20K15599
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
加藤 悠一 神戸大学, 先端バイオ工学研究センター, 特命助教 (70791903)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微細藻類 / クラミドモナス / 油脂 / バイオ燃料 / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
微細藻類は光合成により二酸化炭素を固定して油脂を多量に合成する。光合成的に生成する炭素源を油脂として蓄積するのではなく別の物質の合成に利用できれば、その生産性は飛躍的に向上すると思われる。それには油脂の合成不全を起こした油脂低蓄積変異株を宿主として利用する方法が考えられるが、そのような変異株はバイオ燃料生産者としての有用性が低いため、これまでに詳細な解析がなされていない。本研究では、油脂低蓄積変異株の利用可能性を検証し、この生産戦略の学術的基盤を構築するため、微細藻類クラミドモナスの油脂低蓄積変異株を育種し、油脂含有率低下の影響を代謝レベル・遺伝子レベルで解明する。 本年度は、遺伝子破壊株ライブラリを作成し、蛍光活性セルソーターによる油脂低蓄積変異株のスクリーニングに取り組んだ。遺伝子破壊株ライブラリの作成は、抗生物質耐性カセットをゲノム中のランダムな部位に挿入することで行った。昨年度検討した条件で形質転換を実施し、おおよそ8×10^4種類の形質転換体を含むライブラリを作成した。これは、遺伝子数やエキソン領域の割合を考慮して、油脂低蓄積変異株を得るのに十分なライブラリのサイズであると思われる。遺伝子破壊株ライブラリから油脂低蓄積変異株を取得するため、これらの細胞を窒素枯渇条件で培養した後、油滴を蛍光色素BODIPYで染色し、蛍光活性セルソーターでBODIPY蛍光の弱い細胞を分取した。目的とする細胞を濃縮するために培養と分取の工程を5回繰り返し実施した結果、親株よりもBODIPY蛍光の弱い細胞集団を獲得することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランダムな遺伝子破壊株ライブラリを作成し、油脂低蓄積変異株のスクリーニングを実施した結果、当初の計画通り、親株よりもBODIPY蛍光の弱い細胞集団を獲得することができた。そのため、本研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
獲得した油脂低蓄積変異株のシーケンス解析を行い、油脂低蓄積の原因となった変異遺伝子を解明する。解明した変異遺伝子がその配列情報から油脂合成のレギュレーターであると思われる場合には、RNA-seq解析を実施して遺伝子発現量の変化を網羅的に解明する。加えて、メタボローム解析により油脂含有率の低下に起因する代謝物量の変化を網羅的に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度において、遺伝子破壊株ライブラリの作成が難航したことから、予定していた変異株スクリーニング実験が遅れた。このため、本年度に予定していた変異株の遺伝子発現解析などを行わなかった。この遅れを取り戻せるよう実験計画を再考し、次年度に変異株の分析にかかる物品費として使用する予定である。
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