研究実績の概要 |
これまでも多くの研究者によりクルマエビ類細胞の初代培養の試みがなされてきたが、継代培養に成功した例がない。細胞の培養条件を明らかにするには、目的とする細胞がどのような分化機構を辿るかを理解することが重要である。本研究では、末梢血液中および造血組織中に存在する血球細胞それぞれを、1細胞レベルで集団解析し細胞ごとの分化度を調べることで、どのように造血組織の造血幹細胞が末梢血液中の血球細胞へ分化するかを理解することを目的とする。シングルセル解析を行うことで高い解像度で細胞のサブポピュレーションを分類し、その中から目的の幹細胞の同定が可能になる。 本年度は、ウイルス感染個体から得られたデータの解析およびメタノール固定した細胞由来のDrop-seq実施に注力した。Drop-seqにより、感染および非感染全9個体由来の血球細胞6,788個の遺伝子発現データを得た。1細胞当たりのmRNAおよび遺伝子検出数の中央値はそれぞれ852および443であった。ホワイトスポットウイルス感染は、特定細胞集団の割合を増減させ、特に抗菌ペプチドを発現する細胞集団の割合を減少させていた。抗菌ペプチドを発現する細胞集団が減少していたことから、ホワイトスポット病への対策にはこれらタンパク質の発現を減少させない、もしくは、これらタンパク質の発現細胞集団を減少させないことが重要であることが示唆された。また、メタノール固定した血球細胞をscRNA-seqに用いることに成功した。本固定方法は、サンプリングおよび解析を別日に行えるため、他の水産生物への適用も期待される。
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