研究実績の概要 |
最終年度となった令和4年度においては、昨年度論文として公表したナトリウム利尿ペプチド系(CNP3,CNP4a,CNP4b)のウナギ脳内における発現部位および発現パターンの違いが、行動レベルで機能の差として現れるか?という疑問を中心に解析した。例えば、CNP3は低浸透圧環境で発現が大きく上昇するが、それがウナギの河川侵入や飲水行動など浸透圧に関わる行動を制御するかについては明らかではない。 そこで、ウナギ(成魚)の河川侵入など回遊に関わる行動指標として「パイプアウト=ウナギがパイプから出て遊泳する行動」を用い、低塩分や高塩分刺激に対する忌避反応を定量化することに成功した。現在、CNP3等を脳内に投与し、低塩分に対する忌避反応が減弱するかを解析中である。これらの成果は、本申請関連としては3本目の論文として発表する予定である。 令和2年度~令和4年度の研究期間全体を通じては、当初予定していた稚魚を用いた行動実験が実行できなかったものの、銀化(変態)した成魚と銀化前の成魚を比較して行動解析を行うことで、淡水域侵入に関わる組織や浸透圧受容器の候補を明らかにすることができた。また、CNP4a,CNP4bの脳内発現をウナギの比較対象としてメダカやゼブラフィッシュで調べたところ、硬骨魚類の進化の過程でCNP4bが生じたあと、一時的にCNP4aとの機能分化(subfunctionalization)が生じたこと、そしてそれがウナギより後に進化した魚類では再び消滅したことが思いがけず明らかになった。すなわち、本研究はおおむね順調に推移した。
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