研究課題/領域番号 |
20K15606
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
周防 玲 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (20846050)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テトロドトキシン / ヒラムシ / 共生微生物 |
研究実績の概要 |
フグ毒として知られるテトロドトキシン(TTX)は、フグとは分類学上かけ離れた生物からも次々と検出されており、陸海問わず自然界に広く分布している。その真の生産者に関しては、バクテリアが有力候補との見解もあるが、決定的な証拠は未だ得られていない。本研究では、自然界でフグの毒化に深く関わるフグ毒保有ヒラムシに着目し、無毒給餌の人工飼育下でその生活史を循環させることを目的とする。
本研究において、これまでに種々の条件検討を行った結果、以下の成果を得ている。 1)オオツノヒラムシ幼生の飼育実験:神奈川県葉山の岩礁域で産卵期直前のオオツノヒラムシを採取し、小さなプラスチックケース内で飼育した。ケース内側に卵板の産み付けを確認した後、卵板を別のプラスチック容器に移動・孵化させ、オオツノヒラムシの幼生を得た。幼生時の栄養要求性が不明であるため、種々のプランクトン類を与えることで飼育実験を進めた。未だ変態には至っていないため、引き続き飼育実験の条件検討を進める。 2)オオツノヒラムシの毒組成:オオツノヒラムシに含まれるTTX類のLC-MS分析をおこなった。その結果、TTXのほかに5,6,11-trideoxyTTXなどの主要な関連化合物が含まれていることが明らかとなった。また、同海域に棲息するクサフグから検出されたTTX関連化合物の組成は、オオツノヒラムシのものと概ね一致しており、クサフグはオオツノヒラムシを捕食し、毒を獲得している仮説が支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、水温をコントロールすることで産卵期ではない時期でも卵板を得ることに成功している。種々の検討を行うことで、当初よりもオオツノヒラムシ幼生の飼育期間は延長されているものの、未だ変態には至っていない。本年度の結果を踏まえ、研究計画を変更しながら飼育実験を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
オオツノヒラムシの産卵時期が限られているため、条件等を的確に検討し、幼生の飼育実験を遂行する。種々の条件検討により、オオツノヒラムシ幼生の飼育期間は延長されつつあるものの、未だ変態には至っていないため、飼育するために必要な因子の探索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度はコロナ禍の影響で、オオツノヒラムシのサンプリングを行う回数が限られていた。そのため、物品費・旅費に計上していた費用に未使用額が生じた。令和4年度は、オオツノヒラムシ産卵期に集中的にサンプリングを実施するほか、各種条件下で飼育条件の最適化を試みるため、物品費・旅費として計上する。
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