研究実績の概要 |
フグ毒テトロドトキシン(TTX)は陸海問わず、フグとは分類学上かけ離れた生物からも続々と検出されており、自然界において広く分布している海産毒である。先行研究においてフグ毒は第一次生産者のバクテリアによって生産され、食物連鎖を介してフグ毒保有種に生物濃縮されるという仮説が支持されているものの、未だ決定的な証拠は得られていない。本研究では、自然界でフグの毒化に深く関わるフグ毒保有ヒラムシに着目し、無毒給餌の人工飼育下でその生活史を循環させることを目指した。本研究において、これまでに種々の条件検討を行った結果、以下の成果を得ている。 前年度では、神奈川県葉山の岩礁域におけるオオツノヒラムシのフグ毒関連化合物のプロファイルについて調査し、TTXのほかに5,6,11-trideoxyTTXなどの主要な関連化合物が含まれていることを明らかにした。今年度は調査海域を広げ、日本の各海域でオオツノヒラムシを採取し、LC-MSを用いて各個体のフグ毒関連化合物のプロファイルを明らかにした。また、オオツノヒラムシ以外のフグ毒保有ヒラムシについても調査を進め、種々の有毒ヒラムシにおけるフグ毒関連化合物のプロファイルデータを集積した。 前年度に引き続いて人工海水を使用し、オオツノヒラムシ幼生の飼育実験に取り組んだ。さらに今年度については、海水かけ流し水槽にて飼育実験に取り組み、飼育期間を延長することができた。本研究により、オオツノヒラムシの幼生時における形態変化について知見を深めることができた。
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